処方箋なしの緊急避妊薬、どこで買える?対応薬局と最新の販売状況

薬学
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1. はじめに

日本における緊急避妊薬の入手方法は、従来、医師の処方箋が必要でした。しかし、予期せぬ妊娠のリスクを抱える女性が迅速かつ適切に緊急避妊薬を利用できるよう、厚生労働省は薬局での処方箋なし販売の可能性を検討してきました。その一環として、2023年11月から「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業」が開始され、全国の一部の薬局で試験的に処方箋なしでの販売が行われています。初期は全国145の薬局から開始され、2024年10月現在では340カ所にまで拡大される予定です。

この調査事業は、緊急避妊薬の適正な販売体制の構築を目的としており、薬剤師による適切な情報提供や購入者のプライバシー保護など、販売環境の整備が進められています。これにより、女性が必要なときに迅速に緊急避妊薬を入手できる体制の構築が期待されています。

なお、試験販売の結果、2023年11月28日から2024年1月31日までの間に、全国で2,181件の販売実績が報告されています。

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2. 緊急避妊薬の基礎知識

2-1. 緊急避妊薬とは?

緊急避妊薬(アフターピル)は、避妊を行わなかった、または避妊に失敗した性交後に、妊娠を防ぐために使用される薬です。国内では「レボノルゲストレル」を有効成分とする「ノルレボ錠」やそのジェネリック医薬品が使用されています。

2-2. 緊急避妊薬のメカニズム

緊急避妊薬は、主に排卵の抑制や遅延を通じて妊娠を防ぎます。性交後72時間以内に服用することで、排卵前であれば排卵を遅らせることで受精を防ぎ、排卵後であっても受精卵の着床を阻害する可能性があります。

2-3. 服用タイミングと効果

服用タイミングに関しては、性交後から時間が経てば経つほど効果は減弱していきます。よって、避妊が行われなかった行為後には、できる限り早く対応し薬を服用する必要があります。

  • 性交後から72時間以内の服用が推奨
  • 避妊成功率:約80〜90%
  • 100%の避妊を保証するものではない
  • 既に妊娠が成立している場合は効果なし
  • 効果は直ちに分かるものでなく、専門機関などでの妊娠有無の確認は必須

2-4. 副作用

緊急避妊薬を服用した際に多く見られる副作用として、約3.6%程度で悪心があります。ただし、嘔吐に関しては、それほど多くないようです。万が一、嘔吐が起こった場合、服用後2時間以内であれば、追加で1錠を服用する場合がありますが、すぐに医師に相談することが重要です。

また、月経周期の乱れも一般的な副作用として挙げられます。WHOによる臨床試験データでは、服用後に月経とは無関係な出血(不正出血)が発生する割合が約16%(6人に1人)で、出血は服用後7日以内に認められることがあります。さらに、約半数の服用者において、次回の月経が予定よりも遅れることが報告されています。服用後、かなりの場合、21日以内に消退出血が起こることが確認されています。

2-5. 購入する際の費用

緊急避妊薬の購入費用は、薬局によって若干異なりますが、おおよそ8,000円前後となることが多いです。さらに、妊娠検査薬の購入費用や、場合によっては医療機関での受診費用が追加でかかることもあります。

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3. 日本における緊急避妊薬の購入方法の変化

3-1. これまでの入手方法(病院・クリニック)

日本において、緊急避妊薬(アフターピル)は、長らく医師の処方箋が必要な医療用医薬品として位置づけられてきました。そのため、避妊に失敗した場合や避妊を行わなかった性交後に、緊急避妊薬を入手するためには、医療機関(主に産婦人科)を受診し、医師の診察を受けた上で処方箋を取得し、薬局で薬を受け取る必要がありました。よって、時間的にも精神的にもかなりハードルの高いものであると思われます。

しかし、近年では、オンライン診療の普及に伴い、医療機関を直接受診せずとも、オンラインで医師の診察を受け、処方箋を取得することが可能となり、緊急避妊薬の入手が以前よりも容易になりつつあります。それでもなお、処方箋取得の手続きや費用、の問題は完全には解決されておらず、さらなるアクセス向上が求められてきました。

3-2. 処方箋なしでの販売開始の背景と現状

  1. 医療機関へのアクセスの制約:緊急避妊薬は性交後72時間以内の服用が推奨されていますが、医療機関の診療時間外や休日、または医療機関へのアクセスが限られている地域に住む女性にとって、医師の診察を受けて処方箋を取得する従来のプロセスは大きな負担となっていました。

  2. 国際的な動向:世界の多くの国々では、緊急避妊薬が薬局で処方箋なしで購入可能となっています。例えば、アメリカでは薬剤師を介さずに入手できる州も存在します。このような国際的な動向を受け、日本でも同様の対応を求める声が高まっています。

  3. 性教育や避妊に関する知識の不足:日本の性教育は、他国と比較して遅れていると指摘されています。特に、学校教育において「性交」や「避妊」といった具体的な内容が十分に扱われておらず、避妊方法や性行為に関する正確な知識の普及が課題となっています。このため、避妊の失敗や誤解が生じ、緊急避妊薬の必要性が高まる一因となっています。

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4. 処方箋なしで購入できる薬局

4-1. 購入可能な薬局・ドラッグストア一覧

日本において、緊急避妊薬(アフターピル)は、原則として医師の処方箋が必要な医療用医薬品です。しかし、予期せぬ妊娠のリスクを抱える女性が迅速かつ適切に緊急避妊薬を入手できるよう、厚生労働省は一部の薬局で処方箋なしでの販売を試験的に実施する調査研究を行っています。この調査研究に参加している薬局では、一定の条件下で緊急避妊薬を購入することが可能です。

4-1-1. 調査研究参加薬局の確認方法

調査研究に参加している薬局の最新情報は、以下の公式ウェブサイトで確認できます。このサイトでは、都道府県別に参加薬局の一覧が掲載されており、最寄りの薬局を探すことができます。

緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業 公式サイト

上記のサイトでは、注意事項をよく読み、確認事項にチェックを入れることで「確認ボタン」が有効化され、クリックできるようになります。確認ボタンを押すと、各都道府県別に緊急避妊薬を購入できる薬局の情報が確認できるようになります。

4-1-2. 購入する上での注意事項

緊急避妊薬は、希望するすべての方が購入できるわけではありません。以下の条件に同意し、該当する方のみが購入対象となります。

  • 調査研究に基づく販売
    処方箋なしでの販売は、国から委託を受けた調査研究の一環として行われることを理解し、販売後およびその後のアンケートに協力することが求められます。アンケートは薬局での購入時と、服用後のフォローアップ時の2回に分けて行われます。
  • 購入対象者の年齢と本人確認
    販売対象は、性交同意年齢に達した16歳以上の女性「本人」1に限ります。購入時には身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)による本人確認が必要です。
  • 購入手続き
    身分証明書および購入代金等、必要な書類を持参し、薬局に来局後、薬剤師との面談および説明を受けた上で、緊急避妊薬を購入することができます。また、対象薬局に薬の在庫はあるのか、対象薬剤師がその時間いるかなどを本人により必ず電話で確認してからにします。
  • 服用後のフォローアップ
    薬の服用後、約3週間以内に妊娠の有無を確認する必要があります。妊娠検査薬を使用するか、産婦人科を受診して確認してください。

4-2. オンライン購入の可否

日本において、緊急避妊薬はまだ医師の処方箋が必要な医療用医薬品として分類されています。そのため、医師の診察を受けずにオンラインで直接購入することは認められていません。しかし、オンライン診療を通じて医師の診察を受け、処方箋を取得することで、緊急避妊薬を入手することが可能です。以下がそのおおまかな手順となります。

  1. オンライン診療の予約:緊急避妊薬の処方に対応している医療機関を選び、オンライン診療の予約を行います。この際、厚生労働省が定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき、研修を受けた医師のみが診療を行うことができます。以下は、厚生労働省が公表している緊急避妊にかかる対面診療が可能な産婦人科医療機関の一覧に飛べるサイトです。都道府県別に掲載されており、オンライン診療の対応状況も確認できます。

    緊急避妊にかかる対面診療が可能な産婦人科医療機関等の都道府県別一覧

  2. 医師の診察:ビデオ通話などを通じて医師の診察を受け、緊急避妊薬の必要性や適切性について判断を仰ぎます。診察では、最終月経日、性交のタイミング、既往歴などを確認し、緊急避妊薬の服用が適切かを判断します

  3. 処方箋の発行医師が緊急避妊薬の処方を適切と判断した場合、処方箋が発行されます。その際、患者側が緊急避妊薬を調剤できる薬局を選び、医療機関が処方箋情報を提供します。

  4. 薬剤師による調剤と服薬指導:処方箋に基づき、指定された薬局で薬を受け取りますが、専門の研修を修了した薬剤師のみが調剤を行うことができます。担当薬剤師より、正しい服用方法や副作用について説明を受け、確実にするために患者は薬剤師の面前で薬を服用することとされています。以下は、厚生労働省が公表している緊急避妊薬の調剤が可能な薬局と薬剤師が都道府県別に掲載されているサイトに飛べるリンクです。

    オンライン診療に係る緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬剤師及び薬局の一覧
    ※【注意】上記はあくまで処方箋を受けた場合に調剤可能な薬局の一覧であり、処方箋なしで購入できる薬局の一覧ではありません。処方箋なしの一覧は「4-1-1. 調査研究参加薬局の確認方法」の項に示した薬局です。

  5. 妊娠の確認:緊急避妊薬の服用してから約3週間後に医療機関を受診し、対面による診療を受け、妊娠の有無を確認することが推奨されています。この際、適切な避妊方法の指導を受けることも重要です。

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5. 緊急避妊薬販売購入の現状における問題点

現状、緊急避妊薬の販売は、適正な販売体制の構築が可能かを検証する調査の一環として行われているため、多くの問題点が残されています。そこで、厚生労働省が公表したOTC化の資料[1]を元に、現状の問題点をいくつかピックアップしていきます。

5-1. 服用後の妊娠確認が不十分

令和5年度の調査によると、緊急避妊薬を服用した購入者の86%が、服用後に産婦人科を受診していないことがわかっています。日本産婦人科医会は、この傾向はOTC化後も変わらないと予測しており、妊娠の確認が不十分なまま放置される可能性があると指摘しています。特に、緊急避妊薬の服用前に既に妊娠している場合、薬の服用によって安心感を得てしまい、予期せぬ妊娠の発見が遅れたり、中絶の機会を逃したりするリスクがあります。
これを防ぐためには、使用者が必要に応じて速やかに医療機関へ繋がるよう丁寧に案内することが求められます。また、薬剤師自身も「妊娠の可能性」を正確に確認できるよう、専門的な研修を受ける必要があります。

5-2. 妊娠の可能性を判断するチェックリストの改善点

「妊娠の可能性」を判断するためのチェックリストに不十分な点が指摘されています。約半数の協力薬局が、現在の基準では判断が難しいと感じており、明確で実践的な基準の整備が求められています。薬剤師にとって、妊娠の可能性を適切に確認できる仕組みが不完全であることが、販売の現場での不安やリスクを高める要因となっています。

5-3. 担当薬剤師不在時の対応

緊急避妊薬を処方箋なしで販売する際には、専門的な研修を受けた薬剤師が必須となっています。しかし、担当薬剤師が不在の場合、販売ができないという問題が生じています。実際、協力薬局においても、薬剤師不在のために緊急避妊薬を販売できなかった事例が報告されています。こうした事態を避けるためには、緊急避妊薬を必要とする人々がどのような状況でも購入できる体制を整備する必要があります。

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6. 緊急避妊薬の今後と展望

6-1. 地域ごとの販売体制の整備

緊急避妊薬のOTC化に向けて、販売体制や利用者への対応をより適切にするためには、地域ごとの販売時間帯や利用者の傾向を把握することが重要です。厚生労働省は、地域ごとの状況をより詳細に分析するため、研究協力薬局の数を増やすことを提案しています。これにより、各地域に応じた適正な販売時間帯や受け入れ体制の構築が可能となります。

6-2. オンライン服薬指導の導入

要指導医薬品に対するオンライン服薬指導の導入が検討されています。特に緊急避妊薬のようなリスクの高い医薬品については、オンラインのみでの販売を認めない例外規定の範囲を明確にする必要があります。適正な情報提供と安全性を確保するため、双方向通信によるリアルタイムの指導を原則としつつ、対面確認が必要なケースを慎重に判断することが求められます。

6-3. 薬服用後確認の重要性

緊急避妊薬を服用しても妊娠する可能性がゼロになるわけではないという事実を認識することが大切です。特に、服用後の妊娠確認が不十分な状況が続いているため、妊娠の可能性についての正しい理解を広め、必要な場合には迅速に医療機関へ受診することを推奨する体制が必要です。

6-4. 性教育の充実

緊急避妊薬は予期せぬ妊娠を防ぐための「最後の砦」であり、本来はそれ以前に確実な避妊を行うことが重要です。性教育の充実によって、緊急避妊薬に依存せずに済む選択肢を広めることができます。妊娠の仕組み、避妊方法の選択、緊急避妊薬の正しい使用方法などを教育することで、予期せぬ妊娠の防止や、緊急避妊薬の適正使用につなげることができます。

6-5. サポート体制の改善

緊急避妊薬は、あくまで避妊の手段として一定の効果を持つものの、性犯罪や性暴力などの深刻な事例には十分に対応できない場合が多いです。特に、性犯罪においては、被害者が心理的な理由から助けを求めることが難しいという現実もあります。また、避妊が成功しても、同様の状況を繰り返し、再度妊娠や健康へのリスクに繋がる可能性があるため、長期的な支援が求められます。

このような状況に直面している方々に対して、サポート体制を強化し、安心して生活できる社会の実現が重要です。性暴力被害者に対する法的支援や心理的サポートは、専門機関による対応が不可欠であり、予期せぬ妊娠に対する窓口や相談先を迅速に提供することが求められています。以下、それらに対するリンクを記載します。

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧

予期せぬ妊娠相談窓口のご案内


【参考資料・参考文献】

  1. 「緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けた進捗について」厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課、令和7年2月公表 ↩︎

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