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1. 爪白癬(爪水虫)とは?
まずは、爪白癬(爪水虫)について簡単におさらいしておきましょう。
- 定義
爪白癬症は、爪甲(爪の硬い部分)や爪床(その下の皮膚)に白癬菌が感染して生じる慢性の真菌感染症です。 - 疫学
日本での有病率は約10%と推定され、成人では決して珍しい病気ではありません。高齢者や糖尿病患者、免疫低下状態の方ではさらに頻度が高くなることが知られています。 - 原因
原因は白癬菌であり、高温多湿を好む性質があります。そのため、夏季やスポーツ後など汗をかく環境で広がりやすく、家庭内感染(バスマットやタオルの共用など)もしばしば見られます。 - 診断
見た目だけでは爪白癬と区別しにくい疾患(爪乾癬など)もあるため、顕微鏡下での直接鏡検(KOH法)や真菌培養などによる検査が診断の基本とされています。自己判断で「爪が濁っているから爪白癬だ」と決めつけるのは危険です。 - 症状
爪の白濁や肥厚が典型的ですが、進行すると黄色~褐色に変色したり、爪が脆くなって欠けたり、最終的には剥がれてしまうこともあります。痛みや歩行障害の原因になることもあり、単なる「見た目の問題」では済まない場合もあります。 - 治療
標準治療は抗真菌薬の内服(イトラコナゾール、テルビナフィン)で、爪全体や複数の爪に及ぶ症例では特に効果的です。一方で、肝機能障害などで内服できない患者もいるため、ここ10年ほどで外用薬(クレナフィンなど)が開発され、軽症例や部分的な症例には有効な選択肢となっています。
2. クレナフィン爪外用液の概要
従来、爪白癬に対する外用抗真菌薬は存在していたものの、爪の硬い構造を通過して薬剤を深部まで届けることが難しく、十分な効果を得るのは困難でした。そのため、外用薬は適応外であり、治療の中心は内服薬に限られていました。
このような背景のもと2014年に登場したのが『クレナフィン爪外用液10%』(一般名:エフィナコナゾール)です。クレナフィンは日本で初めて「爪白癬」に対する効能・効果を取得した外用抗真菌薬であり、爪に浸透しやすいよう設計された新しい剤形が特徴です。
2-1. メカニズム
主成分のエフィナコナゾールは、爪白癬の原因である白癬菌の増殖を抑えることで治療効果を発揮します。では、どのようにして真菌に作用するのでしょうか。
白癬菌は爪の奥深くや爪床に存在することがあり、外用薬が効果を発揮するには爪甲の硬いケラチン層を通過する必要があります。エフィナコナゾールはケラチンへの吸着が少なく、爪深部まで浸透しやすいため、爪床にまで到達して効果を発揮します。
真菌の細胞膜では、ラノステロールという物質が14α-デメチラーゼという酵素の働きによりエルゴステロールに変換され、細胞膜の構造を維持しつつ増殖を支えています。エフィナコナゾールはこの酵素に結合して働きを抑制することで、エルゴステロールの生成を妨げ、真菌の細胞膜形成を阻害します。その結果、白癬菌の増殖が止まり、最終的に死滅へとつながります。
2-2. 使用上の注意
クレナフィン爪外用液は、1日1回、定まった時間に塗布するのが基本です。塗布前には爪を清潔に保つことが重要であり、入浴後の爪が柔らかくなったタイミングでの使用が推奨されています。
塗布は、感染している爪全体、爪の境目、爪と皮膚の間など、爪に接する部分をまんべんなく行います。これは、単に現状の感染部位を治療するだけでなく、爪の新しい生え際や周囲の皮膚に白癬菌が感染するのを防ぐことも目的です。
使用期間は、爪全体が生え変わるまでの期間を目安としており、指趾によって異なりますが、一般的には12か月程度の長期にわたります。特に足趾の爪は生え変わりに時間がかかるため、根気よく継続することが重要です。
※ただし、爪の先端部のみなど非常に軽症の場合は、患部周囲のみの塗布で数か月程度の使用にとどまることもあります。実際の使用期間や塗布範囲は症状により異なるため、必ず医師の指示に従うことが大切です。
2-3. 治療上の位置付け
現在、日本で爪白癬に適応を有する外用薬は、クレナフィン®爪外用液(一般名:エフィナコナゾール)とルコナック®爪外用液(一般名:ルリコナゾール)の2種類です。
日本皮膚科学会「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン2019」では、これら外用薬の推奨度は B(行うよう勧める) と位置づけられています。
一方で、第一選択薬は抗真菌内服薬(イトラコナゾールやテルビナフィンなど)であり、推奨度は A(強く勧められる) とされています。特に複数の爪に病変が及んでいる場合や中等症以上では、内服薬が基本的治療とされます。
ただし、内服療法は肝機能障害や薬物相互作用のリスクがあり、定期的な血液検査が必要です。そのため、
- 肝機能障害を有する患者
- 内服薬による長期治療に不安がある患者
- イトラコナゾールの場合、併用薬の数が多い患者
では、外用薬の使用が推奨されます。特にエフィナコナゾールは爪深部まで浸透する性質から、外用薬として一定の効果が示されています。
3. 後発品『エフィナコナゾール爪外用液10%「科研」』はAG
今回先立って発売されたクレナフィン爪外用液の後発品である、エフィナコナゾール爪外用液10%「科研」は、先発品を製造販売している科研製薬の子会社である科研ファルマが製造しているAG製品で2025年6月に新発売されました。
3-1. AGとは?
AG(オーソライズド・ジェネリック)は、「Authorized(認可された)」+「Generic(後発品)」を組み合わせた略語です。
厚生労働省や中医協の資料では明確な定義は示されていませんが、一般的には、先発メーカーが自社やグループ会社に製造を認めて供給されるジェネリック医薬品を指します。
通常のジェネリックは有効成分が同じでも、添加物や製造方法などが異なる場合があります。これに対しAGは、有効成分はもちろん、添加物や製法なども先発品と同一であることが多く、「お墨付きの後発品」として位置づけられています。
3-2. AGの利点
先発品から後発品に切り替える際、多くの方が気になるのは「品質」や「効果の違い」です。通常のジェネリック医薬品も厚生労働省の厳格な承認審査を経ており、先発品と同等の効能・効果があるとされています。しかし、添加物や製造方法が異なることがあり、その違いによって体内動態(薬の吸収や分布の仕方)や副作用の出方にわずかな差が生じる可能性も否定できません。また、患者さんによっては「ジェネリックだから効きにくいのでは」という心理的要因(プラセボ効果の逆作用)が影響することもあります。
その点、オーソライズド・ジェネリック(AG)は、先発品と有効成分だけでなく、添加物や製法も原則として同一です。そのため、少なくとも薬の効果や副作用の発現頻度に差が生じる理由はほとんどありません。
3-3. 完全なAG
さらに、AGでも原料・添加物に加え、製造ラインや製造工場まで全く同一の「完全なAG」(以下AG1)が存在します。この場合、薬の名称や刻印など外観的な違いを除けば、実質的には先発品と同じ製品です。製造系も同一であるため、近年ジェネリック医薬品でしばしば問題となっている出荷調整や供給不安が起こりにくい点も利点といえます。そのため、患者さんにとっても心理的安心感が大きいのが特徴です。
そして、製造メーカーへの確認の結果、今回発売された エフィナコナゾール爪外用液10%「科研」 は、AG1に該当することが分かっています。さらに、外容器や付属の刷毛も先発品クレナフィン爪外用液と全く同じ仕様が採用されており、使用感や利便性で不安を感じることなく続けることができるでしょう。
3-4. エフィナコナゾール爪外用液10%「科研」の概要
後発品であるエフィナコナゾール爪外用液10%「科研」は、前述の通り先発品クレナフィンと有効成分・添加物・製造工程・製造工場・容器・刷毛に至るまで同一のAG1です。そのため、使用法、使用上の注意、効能効果や副作用はもちろん、使用感や塗布のしやすさも先発品と少しも変わりません。
また、規格に関しても先発品と同様に標準の3.56gタイプと倍量の7.12gタイプがラインナップされており、処方切り替えの際にも容量や利便性の面で違和感なく移行できるのが特徴です。
さらに、薬価も先発品より抑えられているため、費用面のメリットを享受しながら、安心して継続使用できる点が大きな利点といえるでしょう。
4. クレナフィン爪外用液AGの費用
爪白癬の治療において、薬の成分や効果はほぼ同じであっても、患者さんにとって最も気になるのは「どのくらい費用が抑えられるのか」という点でしょう。そこで本記事では、各製品の薬価と、実際にかかる自己負担額を整理しました。
製造元が公開している臨床試験データでは、罹患爪数の平均は約3.8枚で、2週間あたりの使用量は約2.5mLとされています。これを基に、片足の爪5本に毎日塗布した場合を想定し、1ヶ月でおおよそ(4mLの標準包装品換算で)2本分を使用すると仮定しました。比較対象として、参考までにルコナック®爪外用液も表に加えています。実際の診療では調剤料などプラスアルファが加わるために、大まかな目安としてご覧ください。
製品名 | 薬価(円/g) | 1割負担(円/月) | 3割負担(円/月) |
---|---|---|---|
クレナフィン爪外用液10% | 1,396.8 | 約1,000 | 約2,980 |
エフィナコナゾール爪外用液10%「科研」 | 676.3 | 約480 | 約1,450 |
ルコナック爪外用液5%(参考) | 663.6 | 約470 | 約1,420 |
比較表を見ると、新発売のAGは先発品の半分以下の費用で使用でき、特に3割負担で両足すべての爪に使用した場合には、月に数千円単位の差が生じます。
一方で、費用だけを見ればルコナックとAGはほぼ同額であるため、「ではルコナックを使えばよいのでは?」と思うかもしれません。しかし、爪への塗りやすさの観点から違いがあります。エフィナコナゾール製品は刷毛タイプで塗布しやすい設計となっており、ルコナックのフェルト状のアプリケーターと比べると爪の隙間や奥まで塗りやすいという特徴があります。
また、同じ抗真菌外用薬といっても、有効成分が異なるため、効果の出方には個人差があります。エフィナコナゾールで改善が得られていた患者さんが、ルコナックに切り替えた場合に同じような効果を得られるとは限りません(もちろん逆のケースもあり得ます)。
したがって、これまでクレナフィンを使用して効果が認められていた方にとっては、費用を半分以下に抑えつつ、同じ使い勝手で治療を継続できるAGへの切り替えは有力な選択肢となるでしょう。
5. 白癬を悪化させないために
5-1. 外用治療の場合は同時治療を
爪白癬を治療する際に注意すべき大切なポイントは、足裏や趾間など他部位に白癬がある場合は同時に治療する必要があるということです。せっかく爪を治しても、足白癬が残っていれば再び爪に感染してしまい、再発によってまた長期の治療を余儀なくされます。
特に外用薬による治療では注意が必要です。内服薬(イトラコナゾールなど)の場合は、爪だけでなく全身に効果が及ぶため同時治療がある程度担保されます。一方で、エフィナコナゾールのように爪のみを対象とした外用薬を使用している場合は、皮膚の白癬は別途クリームなどで治療を行わなければなりません。
そのため、爪白癬の治療を成功させるには「爪だけでなく皮膚の感染も同時に治す」ことが非常に重要です。ここでは、参考までにネットでも購入できる市販の抗真菌外用薬(クリーム剤他)をいくつか紹介します。軽症の足白癬に利用可能ですが、症状が改善しない場合や範囲が広い場合は、必ず皮膚科を受診してください。
- ブテナロックVαクリーム 18g ×3↗️
→主成分ブテナフィン配合。抗真菌作用に加え、かゆみを和らげる成分や炎症を抑える成分、清涼感を与えるメントール、殺菌成分などが配合され、幅広い症状に対応。 - メンソレータム エクシブWディープ10クリーム 35g↗️
→主成分テルビナフィン配合。かゆみや炎症を抑える成分に加え、保湿成分である尿素を含むため、かかとのガサガサや角化症状を伴うタイプにも有効。 - ダマリンパウダースプレーDX 90g↗️
→主成分テルビナフィン配合。スプレータイプのため、足裏や指の間など広範囲に使いやすい。かゆみを抑えるリドカイン、炎症を抑えるグリチルレチン酸、清涼感を与えるメントールも含有。
5-2. 生活習慣による再感染防止
爪白癬の再発を防ぐには、薬物治療だけでなく生活習慣の工夫も欠かせません。白癬菌は高温多湿を好み、足の皮膚や爪に付着して増殖します。また、床に落ちた角質片や爪片に付着した白癬菌は、すぐに死滅するわけではなく、一定期間は感染源となり得ます。そのため、毎日の生活の中で以下のような対策を徹底することが大切です。
- 足をよく洗い、清潔かつ乾燥した状態を保つ(特に裸足でプールなど公衆の場へ行った時)
- 床掃除はこまめに定期的に行う
- 靴下は毎日交換し、通気性の良いものを選ぶ
- スリッパやバスマットの共用を避ける
このような生活対策と薬物治療を組み合わせることが、再発予防の基本となります。薬を塗っていれば安心というものではなく、生活上の注意も徹底することで、より効果的に白癬の再感染を防ぐことができます。
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