アレルギーはなぜ増えたのか?最新研究でわかる本当の理由と今日からできる対策

薬学

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1. はじめに

アレルギー疾患の患者数は世界的に増加しており、日本でもその傾向は顕著です。厚生労働省の調査によれば、国民の約3人に1人が何らかのアレルギー疾患を持つとされています。

代表的な花粉症については、2019年の全国調査で有病率42.5%、スギ花粉症は38.8%と報告され、数十年前と比べると数倍に増加しました。さらに、文部科学省が2022年度に実施した「学校給食における食物アレルギー対応に関する全国調査」では、児童生徒の食物アレルギー有病率が6%以上に達していることが示されています脚注[1]。アトピー性皮膚炎も小児期を中心に依然として高い有病率を示しており、全体的に増加傾向が続いています。

この背景には単一の原因ではなく、

  • 食生活の変化
  • 住宅環境や都市化の進行
  • 花粉やダニなどアレルゲンへの曝露の変化
  • “衛生状態の向上”

といった複数の要因が重なっていると考えられています。こうした状況を受け、国としても2015年に「アレルギー疾患対策基本法」を施行し、社会的課題として位置づけています。

次章では、その中でも注目されてきた「衛生仮説」について、その起源と現在の理解を整理し、誤解されやすいポイントも含めてわかりやすく解説します。

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2. 「衛生仮説」とは

アレルギーが増えた理由を語るとき、必ず登場するのが「衛生仮説」です。
一般には “清潔すぎる生活が免疫を弱くする” という説明で知られていますが、実際の研究の出発点はもっと限定的で、「兄弟が多いほどアレルギーが少ない」という疫学的観察から始まりました。

まずは、衛生仮説がどのように生まれ、どんな背景で広まったのかを整理します。

2-1. 研究の始まりとその背景

衛生仮説(Hygiene Hypothesis)は、イギリスの疫学者 David P. Strachan が1989年に BMJ誌に発表した研究に端を発します脚注[2]

この大規模追跡調査では約3万人の子どもを対象に、「兄弟の数が多い家庭ほど、花粉症(アレルギー性鼻炎)の発症率が低い」という傾向が示されました。

Strachan はこの結果を、幼少期に兄弟を通じて感染症に触れる機会が多いほど、免疫システムが適切に発達するのではないかと解釈しました。これが“衛生仮説”として世界に広まっていったのです。

ただし当初の仮説は、現在のように「清潔すぎる生活一般」へと広げられたものではなく、あくまで幼少期の感染症曝露や兄弟構成、家庭環境の差に基づく限定的な疫学的観察であった点が重要です。

2-2. 清潔な生活が免疫を育てないという考え方

衛生仮説が一般に広まる過程で、「清潔すぎる生活が免疫を弱くする」という非常にシンプルな説明が独り歩きしていきました。

たしかに、現代は上下水道の整備・抗菌製品・空気清浄機など、過去に比べて細菌や微生物と接触しにくい環境になっています。そのため、「清潔な生活 → 微生物に触れない → 免疫が過剰反応しやすくなる」という図式は直感的に分かりやすく、メディアでも広まりました。

しかし、この“清潔すぎる説”は Strachan のオリジナル衛生仮説とは異なる簡略版であり、科学的根拠としては不十分です。実際には「汚い環境が良い」「感染症にたくさんかかれば良い」という意味ではありません。

つまり、「清潔=悪い」ではなく、「微生物の多様性が不足すること」が問題であり、これが後の“旧友仮説”“微生物曝露仮説”“上皮バリア仮説”の基盤になっています。

続く 2-3 では、この最新の理論がどのように現在のアレルギー研究を形作っているのかを解説します。

2-3. 最新研究が示す新しい視点

衛生仮説は1989年の仮説として方向性は正しかったものの、「清潔すぎることが原因」という説明だけではアレルギー増加を十分に説明できないことが分かってきました。

現在の研究では、より精密で多面的なモデルが提唱されており、アレルギーの増加は 新仮説が複雑に絡み合った結果と考えられています。

2-3-1. 微生物曝露仮説(Microbial Exposure / Biodiversity Hypothesis)

近年の疫学研究では、幼少期に触れる微生物の種類が少ないほどアレルギーを発症しやすいという傾向が明確になっています脚注[3]

欧州で行われた大規模研究(PARSIFAL・GABRIELA)では、自然環境で育つ子どもや農家の子どもほどアレルギーが少ないことが示されました。土壌・植物・動物、兄弟との生活、外遊びの多さなど、日常の中で多様な微生物に触れられる環境が免疫の“耐性(トレランス)”形成に寄与しているためと考えられています。

この視点から見ると、Strachan が提唱した「兄弟の多さ」も、感染症の機会が増えるからではなく、生活そのものが微生物に豊かであるかどうかを反映した指標だったと再解釈できます。

つまり、アレルギーの発症を左右するのは「清潔か不潔か」ではなく、幼少期にどれだけ多様な微生物に触れて免疫が鍛えられるかという点にあるのです。

2-3-2. 上皮バリア仮説(Epithelial Barrier Hypothesis)

もうひとつ、近年注目を集めているのが「上皮バリア仮説」です。 皮膚・腸・気道といった体の“入り口”には、異物の侵入を防ぐバリアが備わっています。ところが現代の生活環境では、このバリアが傷つきやすくなっているのではないか──という視点です。

たとえば、

  • 洗剤や柔軟剤、香料などの化学物質
  • 高気密化した住宅
  • 過度な除菌習慣
  • 大気汚染
  • 加工食品中心の食生活

こうした要因が皮膚や腸の細胞を刺激し、バリア機能を弱めてしまう可能性が指摘されています。バリアが壊れると、食物やダニ、花粉といったアレルゲンが“本来通るはずのないルート”から体内に入り込み、免疫が過剰に反応しやすくなるのです。食物アレルギーで問題となる「経皮感作(肌からのアレルギー化)」も、この仮説と深く結びついています。

つまり、現代のアレルギー増加は「清潔すぎるかどうか」ではなく、 「微生物との触れ合いが減り、同時に体のバリアが弱まりやすい環境になった」 という二重の変化が背景にある──これが最新研究が示す新しい理解です。

2-3-3. 複数の要因が融合した「総合モデル」が主流へ

最新のアレルギー研究は、 衛生仮説が示した“方向性”は正しかったものの、単純な説明では不十分であることを明らかにしました。

現在では、 微生物環境 × バリア機能 × 現代生活の複雑な影響 この三つが絡み合う総合的なモデルこそが、アレルギー増加の本質だと考えられています。

つまり、問題は「清潔すぎるかどうか」ではなく、

  • 幼少期に微生物との触れ合いが不足する生活環境
  • 化学物質や食習慣などによってバリア機能が弱まりやすい現代的要因
  • 都市化・気候変動・食生活の変化といった社会的背景

これらが重なり合い、現代のアレルギーを形作っているのです。

この視点に立つと、アレルギーは単なる“免疫の過剰反応”ではなく、生活環境そのものを映し出す鏡とも言えます。

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3. アレルギーが増える主な原因

アレルギーの増加は、ひとつの要因だけでは説明できません。食生活、住環境、都市化、気候変動…現代社会そのものが、免疫のあり方を変えてきました。

2章では、衛生仮説から発展した最新の科学的視点を紹介しました。ここでは、私たちの暮らしの中でアレルギーを押し上げている“背景要因”を、シンプルに整理します。

3-1. 食生活の変化──腸と免疫のバランスが揺らぐ時代

現代の食生活は、腸内環境と免疫の調整力(トレランス)に影響を与えています。

  • 食物繊維の不足
    腸内細菌のエサが減ることで、炎症を抑える短鎖脂肪酸が低下しやすい。
  • 超加工食品の増加
    添加物・乳化剤・人工甘味料などが腸粘膜にストレスを与え、バリア機能に影響する可能性。
  • 食の単調化
    食材の多様性が乏しく、腸内細菌の“幅”が失われやすい。

腸は免疫の最大の“学習装置”でもあり、そのバランスが揺らぐことでアレルギーの土台が整いやすくなります。

3-2. 住まいと暮らしの変化──快適さの裏にある“微生物との断絶”

現代の住宅は快適になった一方で、免疫が触れる微生物の量と質が激減しました。

  • 高気密・高断熱化で微生物多様性が低下
    外気との接触が減り、屋内微生物が単調になりやすい。
  • 室内滞在時間の増加
    ダニやハウスダストに触れる機会が増え、皮膚や気道のバリアが刺激を受けやすくなる。
  • 化学物質の増加
    洗剤・柔軟剤・抗菌スプレーなど、便利さの裏でバリア機能に負荷がかかりやすい環境。

これは「微生物曝露仮説」「上皮バリア仮説」と直結する部分であり、“触れる微生物が減り、守るバリアが弱まりやすい” という二重の変化が背景にあります。

3-3. アレルゲンそのものの変化──量と質が“現代仕様”に変わった

近年は、アレルゲン側にも明確な変化が生じています。

  • 花粉の増量と長期化
    スギ・ヒノキの成熟、温暖化、大気汚染との相互作用でアレルゲン性が増強。
  • ダニ抗原への曝露増加
    住宅性能の向上により、ダニが繁殖しやすい環境が一般化。
  • PM2.5・ディーゼル排気の影響
    微小粒子が粘膜を傷つけ、花粉やダニのアレルゲン性を“ブースト”する。
  • 食品加工の変化
    加熱や微細化によりタンパク質の構造が変わり、免疫の認識が変わる場合がある。

つまり、現代はアレルゲンに“触れやすく・反応しやすい”時代でもあるのです。

3-4. 日本ならではの背景──気候・文化・制度がつくる“独自のアレルギー環境”

日本には、世界的にも珍しいアレルギー増加の土壌があります。

  • スギ花粉の圧倒的多さ
    国土の広範囲に植林され、温暖化と相まって飛散量は世界有数。
  • 高温多湿によるダニ繁殖
    日本の気候と住宅構造はダニの好条件。
  • 食文化の急速な変化
    和食 → 欧米化で腸内環境の“揺らぎ”が進んだ。
  • 教育現場の管理水準が高い
    除去食・調査票・エピペンの普及により“発見率”が高いのも特徴。

これらが組み合わさり、日本は“アレルギーの可視化と発症が進みやすい国”となっています。

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4. 食物アレルギーが増えている理由

近年、テレビやSNSで食物アレルギーのニュースを目にする機会が明らかに増えています。厚生労働省の調査でも、この10数年で花粉症などとともに、食物アレルギーの報告が着実に増えていることが示されています。

では、なぜ食物アレルギーはこれほど増えているのでしょうか。その理由を理解するためには、まず発症が最も目立つ 乳幼児期の“からだの仕組み” を知ることが重要です。ここからは、赤ちゃんに食物アレルギーが起こりやすい背景を、順を追って解説していきます。

4-1. 乳児の腸と免疫──“学習途中の免疫”は反応しやすい

食物アレルギーが最も多いのは、乳児〜幼児期です。これは、赤ちゃんの体が “大人とはまったく違う免疫の初期設定” を持っているためです。

  1. 腸が未成熟で、異物が入り込みやすい
    生まれたばかりの腸はまだ発展途中で、腸の細胞同士の“すき間(タイトジャンクション)”が十分に閉じきっていません。 そのため、食べ物のタンパク質が体内に入りやすく、アレルギー反応につながりやすい状態です。

  2. 免疫が“アレルギー反応を起こしやすい”方向に傾いている
    乳児の免疫は、生まれた直後は IgE抗体を産生しやすいタイプ(Th2優位)に傾いています。 これは胎児期に、もし攻撃型の免疫(Th1)が強く働きすぎると母体に対する拒絶反応が起こり、 妊娠を安全に維持できなくなるため、胎児は自然と“Th2寄り”の状態で過ごすよう調整されているからです。 この“胎児期の名残”が生後しばらく続くため、 免疫バランスが整うまではアレルギー反応が比較的起こりやすい時期になります。

  3. 経皮感作が起こりやすい皮膚
    乳児の肌は薄く乾燥しやすいため、湿疹や荒れた部分から食物由来のタンパク質が侵入し、 皮膚の免疫細胞に取り込まれることで“経皮感作”が起こりやすくなります。 この経皮感作は、食物アレルギーの発症リスクを高める重要な要因とされています。

4-2. “遅らせる”時代から“適切な時期に少量”の時代へ

かつては「アレルギーが心配な食材は、できるだけ遅く与えた方がよい」と考えられていました。 しかし近年の大規模臨床試験により、この考え方は大きく転換しています脚注[4]

LEAP研究・EAT研究が示した新しい方向性

  • ピーナッツや卵を 早期に少量導入した方が、発症リスクを下げるケースがある
  • 完全除去を続けるよりも、適度な経口摂取が“耐性(トレランス)”獲得に関わる

重要なのは、“早めにたくさん”ではなく、「安全な形で、少量を続けること」 です。そして誤解されがちですが、これは決して自己判断で行うものではありません。必ず、小児科やアレルギー専門医と相談しながら進めることが安心につながります。

そして、これらの研究が示したのは、 “遅らせるほど良い”という従来の考え方には根拠が乏しかった という事実です。

つまり、腸は「寛容を学ぶ場所」、皮膚は「警戒を学ぶ場所」という役割の違いがあるため、食材導入を遅らせている間に皮膚から感作が起こりやすい、というリスクが浮かび上がってきたのです

4-3. 加工食品や加熱が与える影響

同じ食材でも、加工の仕方や加熱条件によってアレルゲン性は大きく変化します。 これは一般にはあまり知られていませんが、近年の食品科学では極めて重要なテーマとなっています。

  1. 加熱によるタンパク質構造の変化
    タンパク質は熱によって立体構造が変わり、その結果、免疫系の認識のされ方も変わります。決して、「加熱=安全」というわけではありません。
    • 卵白(オボムコイド):十分に加熱すると抗原性が低下する場合がある
    • 牛乳(カゼイン):熱に強く、加熱しても抗原性が残りやすい
    • 小麦(グリアジン):加熱によって逆にアレルゲン性が増すことがある

  2. 加熱条件による違い
    同じ食材でも、加熱条件によってアレルゲン性は大きく異なります。卵を例に挙げると・・・
    加工卵・ゆで卵・半熟卵・生卵・・・
    同じ「卵」でも反応は全く異なることがあり、医療現場では「卵アレルギーでも耐えられる加熱条件が人によって違う」という現象が日常的に見られます。

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5. 今日からできるアレルギー対策

アレルギーは「体質だから仕方ない」と思われがちですが、実は 生活環境を少し整えるだけで“反応しにくい体”を作ることができます。そしてそれは、以下の3つが大きな要因となります。

  • 空気(吸い込むもの)
  • 皮膚(触れるもの)
  • 腸と食事(取り込むもの)

さらには、前述のトレランスの問題からも、アレルゲンを遠ざけるのみではいけないもわかったと思います。

5-1. 部屋の環境を整える

現代人は一日の大半を室内で過ごします。だからこそ、家の環境を整えることがアレルギー対策の第一歩。難しい工夫は不要。基本を押さえるだけで十分な効果があります。

  1. こまめな換気で“空気を入れ替える”
    高気密住宅では空気がこもりやすく、花粉・ハウスダスト・化学物質が滞留しがちです。 1日数回、5〜10分の換気や換気扇の活用で、室内の空気は見違えるほどクリアになります。

  2. 寝室を最優先に清潔に
    アレルギー症状は夜間〜朝に悪化しやすく、その原因は寝具に潜むダニやホコリ。 シーツや枕カバーの洗濯、ベッド周囲の清掃など、寝室環境を整えるだけで症状が軽くなる人も少なくないのです。

  3. ホコリを舞い上げない掃除術
    掃除の仕方を少し変えるだけで、アレルゲンの舞い上がりを大幅に減らせます。 朝イチの乾拭き、フローリングは水拭きで仕上げるなど、小さな工夫の積み重ねが大きな効果につながります。

  4. 湿気管理こそダニ対策の本質
    ダニは湿度60%以上で急増します。温度よりも湿度管理が重要。 除湿・通気を意識するだけで、ダニ・カビ・ホコリの増え方そのものを抑えられます。

5-2. 皮膚を守る──感作(アレルギーの始まり)を防ぐ

近年の研究で明らかになってきたのは、「肌からの侵入(経皮感作)」がアレルギーのスイッチを入れるという事実です。 つまり、皮膚を健やかに保つことは、そのスイッチを切ることに直結します。

  1. 乾燥は“バリアの穴”になる
    皮膚が乾燥すると、バリア機能が壊れやすくなり、食物成分やダニなどの微細な物質が侵入しやすくなります。これがアレルギーの引き金となるのです。 特に冬場やエアコン使用時は湿度が下がりやすいため、加湿や保湿ケアを意識することが重要です。

  2. 湿疹は放置しない
    湿疹や傷はアレルゲンの“入り口”となり、放置すると炎症が広がる恐れがあります。かゆみやひっかき傷も同様です。 「少しだから大丈夫」ではなく、早めのケアが拡大を防ぐ鍵となります。


  3. 手荒れは見逃されがちなアレルギーの入り口
    家事や仕事で手荒れを「仕方ない」と思いがちですが、手も立派なアレルゲンの侵入経路です。 ゴム手袋の使用や、ハンドクリームによるこまめな保湿は、小さな習慣で大きな予防効果を生みます。

5-3. 腸と食事を整える──体の“免疫ブレーキ”を育てる

腸は免疫細胞の約7割が集まる、最大の免疫器官です。 この腸が乱れると、炎症やアレルギー反応が起こりやすくなります。だからこそ、腸を整えることは“免疫のブレーキ”を育てることにつながります。

  1. 食物繊維を少し意識して増やす
    日本の食文化は欧米化の影響で食物繊維の摂取量が減少しています。食物繊維は腸内細菌の大切な栄養源となり、そこから炎症を抑える短鎖脂肪酸が生み出されます。日々の食事にキノコ類、豆類、根菜類などを一品加えたりして、少しずつでも腸内環境を整えていきましょう。

  2. “極端な除去”は逆効果になることも
    気になる食材を自己判断で避けすぎると、栄養不足や皮膚バリアの低下、さらには腸内環境の乱れにつながることがあります。食事制限は慎重に行うべきであり、不安がある場合は専門医に相談することが望ましいでしょう。

  3. 発酵食品や和食を「少し足す」
    味噌汁、ヨーグルト、納豆などの発酵食品は、腸内細菌の多様性を高める代表的な プロバイオティクス として知られています。これらを日々の食事に少し加えるだけで、腸内環境は安定し、免疫の過剰反応を抑える力が育まれます。和食の持つ自然なバランスも、腸を健やかに保つ大きな助けとなります。

5-4. 自然との距離を少し近づける──“良い接触”も免疫には必要

アレルギー対策は「避ける」だけでは十分ではありません。 近年の研究では、自然環境に存在する多様な微生物との“良い接触”が、免疫の発達や調整力(トレランス)を育てるうえで欠かせないことが示されています脚注[5]

現代の子どもは屋外活動が減り、土や植物に触れる機会が少なくなっています。これにより、免疫が本来学ぶべき刺激が不足し、アレルギーが増える一因となっているのです。

もちろん、不衛生に暮らす必要はありません。 大切なのは、清潔を保ちながら自然との距離を少しだけ縮めること。

  • 公園で遊ぶ
  • 土や植物に触れる
  • 外遊びの時間を確保する

こうした“適度な自然環境との接触”は、免疫系に多様な刺激を与え、アレルギーを抑える力を育てる助けになります。

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6. 衛生環境を整えるおすすめアイテム― 毎日の暮らしが“治療の一部”になる ―

アレルギーの増加には、住まいの環境と微粒子・アレルゲンへの曝露が深く関わっています。 だからこそ、家の環境を整える道具は“日常の治療サポート”として大きな意味を持ちます。

ここでは、必要以上に種類を増やさず、科学的に合理性のあるものだけを厳選して紹介します。

6-1. 空気清浄機とフィルター

空気清浄機の役割はシンプルです。 空気中のアレルゲンを吸い込んでしまえば、体は反応できません。特に効果が期待できる場面は以下の通りで、HEPAフィルター搭載+寝室での24時間稼働が、最も効果的な使い方です。

  • 花粉シーズン
  • PM2.5・黄砂が多い地域
  • 高気密住宅で換気が不足しがちな環境
  • 寝室で鼻炎症状が悪化する人

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6-2. 防ダニ寝具と布団乾燥機

布団は皮膚に触れる時間が圧倒的に長く、まさに“アレルゲンの巣”となりやすい場所です。特にダニ抗原は喘息・アトピー・アレルギー性鼻炎の大きな原因のひとつ。実際に「寝室環境を整えただけで症状が改善した」というケースも少なくありません。

推奨されるアイテムは以下の通りです。

  • 防ダニカバー
  • 布団乾燥機(湿気を飛ばす)
  • 丸洗いできる寝具

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6-3. 湿度コントロールグッズ

ダニやカビは湿度60%を超えると一気に増殖し、アレルゲン量が急増します。これが、季節の変わり目や梅雨時にアレルギー症状が悪化する大きな理由です。 一方で湿度が40%を下回ると、ウイルスが活発になりやすく、乾燥によって皮膚や気道のバリア機能も低下し、アレルギー症状をさらに悪化させる要因となります。

したがって、湿度は適度に保つことがとても重要になってきます。特に、湿度が上がりやすい梅雨期、乾燥が厳しくなる冬には補助アイテムを利用することを推奨します。

  • 除湿機(梅雨〜夏)/ 加湿器(冬)
  • クローゼット用除湿剤
  • 浴室の換気アイテム

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6-4. 鼻うがいアイテム

鼻うがいは、鼻炎症状を和らげるサポートケアとして近年広く取り入れられています。花粉症やハウスダストによる不快な症状に対しても、補助的な療法として位置づけられています。

近年の研究では、生理食塩水による鼻洗浄が鼻炎症状の軽減に有効であることが示されており、日常的なセルフケアとして注目されています。

  • 花粉やハウスダストを物理的に洗い流す
  • 正しい使用法で継続することで鼻炎などの予防にもなる

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7. 薬剤師の経験則から感じること

薬剤師として過去に受けてきた相談からすると、アレルギーは「努力が足りないから起こるもの」ではないと強く感じます。 むしろ、生活環境や食の変化、住まいの構造、微生物との触れ合いの減少など、社会全体の変化が積み重なった結果です。

だからこそ私はいつもこう考えています。 「責めるべきは本人ではなく、環境そのもの」。

実際に、寝室環境を整えたり、肌トラブルを早めに治したり、食材導入を正しい時期に行うだけで、症状が劇的に軽くなる方も多くいます。

薬はもちろん大切ですが、生活環境を整えることも同じくらい大きな治療の一部なのだと、現場で日々実感しています。

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8. まとめ

アレルギーが増えている理由はひとつではなく、 生活環境・住まい・微生物との関わり・気候・食生活など、 多くの要因が複雑に重なっています。

しかし同時に、今日からできる対策は確かに存在します。

  • 住環境を整える
  • 空気をきれいにする
  • 肌バリアを守る
  • 食生活のバランスを整える
  • 幼少時に多くの自然に触れる

ひとつひとつは小さな工夫でも、積み重なればアレルゲンとの接触を大きく減らせます。

アレルギーは“体質だから仕方ない”ものではありません。 正しい知識と、無理なく続けられる工夫があれば、今より確実にラクに暮らせるようになります。

本記事が、あなたやご家族の毎日に、少しでも安心と快適さを届けられれば幸いです。


【参考資料・文献】

  1. 日本家政学会誌, Vol. 76, No. 4, pp. 162–175, 2025. ↩︎
  2. Strachan DP. Hay fever, hygiene, and household size. British Medical Journal, 1989; 299: 1259–1260. ↩︎
  3. Alfvén T, Braun-Fahrländer C, Brunekreef B, von Mutius E, Riedler J, Scheynius A, et al. Allergic diseases and atopic sensitization in children related to farming and anthroposophic lifestyle — the PARSIFAL Study. Allergy. 2006 Apr;61(4):414-21. ↩︎
  4. Du Toit G, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. NEJM. 2015;372:803–813 ↩︎
  5. The “Hygiene Hypothesis” and the Lessons Learnt From Farm Studies(von Mutius ら, 2021) ↩︎

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