家計に大打撃になるケースも!?【2024年10月施行】特許切れ薬の負担増とその対策完全解説

1. はじめに

2024年10月から、特許切れ薬に関連する新たな制度が導入されます。この変更により、一部の患者においては薬代が大幅に増加する可能性があるため、事前にその影響を理解しておくことが重要です。特に、どのような人がこの制度の適用を受けるのか、またどのようなケースに該当するのかを知ることで、経済的な負担を軽減する手助けとなるでしょう。

1-1. 特許切れ医薬品の患者負担増に踏み切った背景

(1)医療費増大と財政的圧力
日本では高齢化の進展に伴い、医療費の増加が続いています。政府は医療費の持続可能性を確保するため、さまざまな施策を講じてきました。その一環として、特許切れ医薬品の患者負担増が決定されました。特に先発薬の使用が続くと、医療費が増加し、保険制度の負担が重くなります。これに対処するため、先発薬を選ぶ患者には追加の負担を求める方針が採られました。

(2)後発薬の普及状況と価格の不均衡
政府は後発薬の使用促進に力を入れており、その結果、数量ベースでの後発薬の普及率は約80%に達しています。しかし、金額ベースでは2023年時点で56.7%にとどまっており、価格の面での普及が進んでいません。これは、後発薬の価格が予想よりも高く、先発薬と比べて十分なコスト削減が実現できていないためです。この価格の不均衡が、医療費の高騰を助長しているとされています。今後も高齢化が進む中で、医療費の増加に対応するためには、先発薬を選ぶ際の追加負担が必要とされるのです。

1-2. 特許薬切れ薬とは?

特許切れ薬とは、新薬が特許により一定期間保護され、その期間が終了した後に、他の製薬会社が同じ有効成分を使用して製造できる薬のことを指します。特許の法的保護期間は原則20年ですが、製造承認にかかる時間(新薬の承認審査など)を考慮すると、実際に新薬が市場に登場するまで数年がかかるため、市場独占期間は通常10~15年程度とされています。この期間中、製薬会社は新薬の独占販売権を持ち、高額な研究開発費や臨床試験費用を回収します。

特許が切れた後は、他の製薬会社が新薬に比べて少ない開発コストで、同じ有効成分を持つ後発医薬品(ジェネリック医薬品)を製造できるようになります。これにより市場競争が生まれ、薬価が大幅に下がることがあります。後発医薬品は、先発薬の30~50%程度の価格で提供されることが多く、これにより患者の自己負担額や医療保険財政の負担を軽減することが期待されます。

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2. 負担対象および金額

まず、今回の患者負担増に関しては、全員に対してかかるわけではありません。また、増額分も一律ではなく、処方された薬の薬価と関係します。

2-1. 対象品目

今回の負担増は、すべての医薬品に適用されるわけではありません。対象となるのは、処方された薬の中に長期収載医薬品が含まれている場合で、特に後発医薬品がある先発医薬品の一部が負担増の対象となります。

さらに、その中でも負担増の対象は1,095品目に限られており、以下の条件を満たすものが該当します。

  • 後発医薬品が発売された翌月から5年以上経過している医薬品(バイオ医薬品を除く)
  • 上記の条件を満たさない場合でも、後発薬が全体の半数以上使用されている薬も対象

このため、後発薬としての市場実績がある、または供給に問題がない医薬品が対象となると言えます。

2-2. 対象者

今回の患者負担増は、特許切れの対象品目が処方された中で、医療上の必要性がないにもかかわらず、患者が「後発医薬品ではなく、先発品(長期収載品)を使いたい」と希望した場合にのみ発生します。

【医療上の必要性とは?】
医師が、特定の先発医薬品でないと効果が十分に発揮されないと判断した場合や、後発医薬品に明らかに副作用が見られる場合などがこれに該当します。例えば、湿布剤の外用薬におけるかぶれや、錠剤の成分に対するアレルギー反応が該当します。医師がこうした理由で後発医薬品の使用が適切でないと判断した場合は、先発品の使用が認められ、患者負担増は発生しません。

一方、嗜好や使用感による希望(錠剤の味が好みでない、塗り薬の使用感が悪いなど)は、医療上の理由として認められないため、対象外です。ただし、錠剤の大きさに関しては物理的な理由で飲み込みに困難が生じることがあり、これが治療に支障をきたすため、医療上の理由として認められる可能性が高いと思われます。

2-3. 負担増分の計算

負担増の仕組みは、先発品と後発品(複数の後発品がある場合、その中で最も高い薬価を基準とする)の薬価差の4分の1が保険適用外となり、その差額が患者の自己負担に追加されるというものです。このため、通常の自己負担額(医療保険の1〜3割負担)に加えて、さらに費用がかかることになります。

負担増額分:(先発品の薬価ー後発品の薬価)×0.25

例として、3割負担の患者が、先発品(薬価100円)と後発品(薬価40円)の医薬品を100錠分、先発品で継続するケースで計算してみましょう。

  • 従来の負担額:先発品の薬価100円×負担割合0.3×100錠=3,000円
  • 負担増額:(先発品の薬価100円ー後発品の薬価40円)×0.25×100錠=1,500円
  • 10月以降負担額:従来の負担額3,000円+負担増額1,500円=4,500円

これにより、負担額が想像以上に増えていることがわかります。参考までに後発品にした場合も計算してみましょう

  • 後発薬の負担額:後発薬の薬価40円×100錠×負担割合0.3=1,200円

先発品を選び続けた場合と比べて、後発品に切り替えれば大きなコスト差が生まれることが明らかです。ただし、これらは薬剤料のみの計算であり、調剤料や薬学管理料などは別途かかりますので、実際の負担は異なります。

また、薬価が高い医薬品ほど、先発品に対する後発品の価格の割合が低下しやすい傾向があるため、先発薬と後発薬の価格差がさらに大きくなることから、負担増額もより増えてしまう傾向があります。目安として、10円以下の薬の後発品では、先発薬の6〜9割程度と価格差があまり大きくないのに対し、50〜100円以上の薬では後発品が3〜6割程度にまで下がり、負担増がより顕著になります(もちろん個別で全く異なるケースはあります)。

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3. ジェネリック医薬品は本当に信頼できるのか?

いくら安かろうと、品質が落ちるとなると特に医薬品にとっては致命的となります。2020年に発覚した小林化工の事故を皮切りに、調査が厳しくなってから複数の製薬会社でも様々な不備が発覚し、後発品に対する信用を失わせ、安いものはそれなりなんだ、という印象を与えうる結果となりました。現状、果たして本当に後発医薬品を安心して使えると言っていいのでしょうか?

3-1. 近年問題になっている後発品製薬会社の不祥事

(1)小林化工の睡眠薬混入事案(2020年)
2020年、小林化工が製造した抗真菌薬「イトラコナゾール錠 50『MEEK』」に、睡眠導入剤「リルマザホン」が誤って混入するという重大な事案が発生しました。この事案により、服用した患者240名以上が健康被害を受け、うち2名が死亡するという深刻な結果となりました。

原因の一つとして、抗真菌薬の製造過程で「原料を継ぎ足す作業」を行う際、別の薬の容器と取り違えたことが指摘されています。この作業は、製造過程で使用する原料が不足した際に、追加の原料を既存のバッチに継ぎ足す工程です。しかし、この作業自体は国が承認していない工程で行われていたものであり、さらに、小林化工は他の製品でも国が承認していない工程で製造を行ったり、品質試験を実施せずに試験結果をねつ造するなどの違反行為を行っていました。この事案を受けて、ジェネリック医薬品全体に対する信頼が大きく揺らぎました。

(2)日医工の不正とその影響
日医工では、品質試験で不適合となった錠剤を再加工したり、出荷前の試験を一部省略するなど、国が承認した工程とは異なる製造を10年以上続けていたことが発覚しました。この不正が明るみに出た結果、同社は行政処分を受け、対象工場での製造や出荷が停止しました。これが全国的な医薬品供給不足の一因となっています。

業績も急速に悪化し、2023年5月には「事業再生ADR」を申請し、取引銀行の支援を受けながら経営再建を目指すことを発表しました。

(3)その他製薬会社の不正
その他にも2022年には、共和薬品が国が未承認の医薬品添加物である潤沢剤を使用していたことが発覚しました。さらに、2023年には沢井製薬が製造していた胃薬において品質試験の不正が発覚しました。具体的には、製品が規格に適合しないにもかかわらず、試験結果を改ざんする形で出荷を続けていたというものです。この不正により、医療現場で使用されるジェネリック医薬品の安全性や信頼性がさらに揺らぐ事態となりました。


3-2. 先発医薬品と後発医薬品の承認されるための試験の違い

医薬品が市場に出るまでには、厳しい試験をすべてクリアする必要があります。承認に向けた試験には、「有効成分に関する試験」「製剤化された医薬品に関する試験」の2つの大きなカテゴリーがあります。

先発医薬品は、全く新しい有効成分や製剤技術を使用しているため、まず薬理試験や毒性試験、動物実験を通して安全性と効果を確認し、その後臨床試験を実施してヒトへの効果や安全性を確認します。これには、第I相から第III相までの大規模な臨床試験が含まれ、時間とコストがかかるのが特徴です。これにより、有効成分の特性と、その成分を含む製剤の両方が厳格に検証されます。

一方で、後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、既に承認された先発医薬品と同じ有効成分を使用するため、有効成分に関する試験(薬理試験、毒性試験など)は省略されます。その代わり、後発医薬品では製剤化された薬の試験として、生物学的同等性試験が行われます。これは、後発医薬品が体内で先発医薬品と同じように吸収され、同様の血中濃度を維持し、同等の効果を発揮するかどうかを確認する試験です。この試験では、主に以下の点が確認されます。

  • 体内での吸収速度と吸収量の比較(主に血中濃度の測定)
  • 効果の発現速度や持続時間の同等性

生物学的同等性が確認されることで、後発医薬品は先発医薬品とほぼ同等の効果が期待できると判断されます。しかし、完全に同一というわけではなく、添加物や製剤技術の違いにより、少しのばらつきが生じる可能性があります。

こうした理由から、一部の医療専門家や医療関係者の中には、後発医薬品が先発医薬品と本当に同一の効果を持つのかについて疑問を持つ声もあります。特に、患者によっては体感する効果や副作用に差が出ることがあり、これが後発医薬品への不安の一因となっています。

3-3. ジェネリック医薬品の今までとこれから

国の方針による急速なジェネリック医薬品の推進は、医療費削減に貢献しましたが、それに伴い供給側には大きな負担がかかりました。また、コロナ禍や物価高騰の影響も重なり、ジェネリック業界は品質と安定供給を維持するために大きな転換期を迎えています。

  • 基本的に、後発医薬品は一部試験が免除されていますが、厚生労働省が定めた基準(GMP基準や生物学的同等性試験)を満たすことで、有効性や安全性が確保されています。これにより、効果効能については先発医薬品とほぼ同等とみなされています。
  • 先発医薬品と後発医薬品の違いの一つは、添加物や製剤の違いです。この点は一部の医療関係者や専門家によって不安視されることがありますが、添加物の相違が大きく効果に影響を与える場合、その薬は承認を受けることができません。したがって、実際には安全性と効果は担保されていると言えます。
  • 品質に問題があるとすれば、それは規定違反によるものです。ジェネリック製薬会社がコスト削減や効率を優先しすぎ、製造過程で定められた基準を満たしていない場合に発生することが多いです。これは、特に近年の不祥事に関連しています。
  • 不祥事の背景には、急激なジェネリック医薬品の普及がありました。需要が急速に増大し、供給がそれに追いつかず、結果として品質管理が疎かになるケースが生じました。さらに、供給量の増加に対して品質管理を担当する機関の監視が追いついていない状況も、問題の一因と言えます。
  • 最近のジェネリック医薬品に関連する不祥事を経て、厚生労働省や第三者機関による品質管理や監視体制が強化されました。これにより、今後はより安定した供給と品質の維持が期待されています。医療機関や患者の関心も高まっており、業界全体の意識向上にもつながっています。
  • 後発品業界の再編も検討されています。現在、同じ薬に対して複数の後発品が存在することで価格競争が激化しており、製薬会社が十分な利益を確保するのが難しい状況です。このため、後発医薬品の品目数を適正化するための薬価制度の見直しや、先発医薬品に対する後発品の銘柄数の制限などが検討されています。これにより、ジェネリック医薬品業界が持続的に運営されるための対策が進められることが期待されています。

3-4. 最終的にはどうすべきか?〜個人的見解〜

結局、先発医薬品か後発医薬品か、どちらを選ぶべきか悩む方もいるでしょう。ここでは、薬剤師としての長年毎日多くの患者さんとの話を聞いてきた経験を基に、全くの忖度なしで個人的な見解を述べたいと思います。もちろん、エビデンスがあるわけではありませんが、この経験は無視できないものであると考えています。

ジェネリック医薬品でも、本人が納得できればほとんどのケースで問題はない

私の経験からすると、後発品に変更しても、ほとんどのケースで効果が著しく変わったり、副作用が突然出始めたりすることはほとんどありませんでした。もちろん、これは私個人の経験に基づくもので、科学的なデータとは異なりますが、十分なサンプル数に基づいていると感じています。よって、後発品を使用するかどうかは、最終的には患者本人の納得感が重要だと考えます。

ただし、いくつかのケースでは慎重さが求められます。

  • ジェネリック医薬品に不信感を持つ方
    プラセボ効果も薬の効果に大きく影響を与える可能性もあります。不信感を持ちながら薬を飲み続けると、その効果が減弱し、医療において問題を引き起こす可能性があります。安心して服用できる選択を優先すべきでしょう。
  • 早めに効果を期待する薬の場合
    鎮痛剤など、即効性が求められる薬の場合、後発品では、多少の効果発現の早さの違いを訴える患者さんがいました。ただし、サンプル数は限られているため、試してみて効果を確認するのも良いでしょう。
  • 効能が先発品と異なる場合
    稀に、先発品と後発品で効能が異なることがあります。本人が持つ疾病名が後発品の適応症でない場合、その薬は調剤してはいけないことになっています。変更の際には、現在服用している薬に対する病名や症状を薬剤師に伝えることで、未然に問題を防ぐことができます。
  • 先発品の薬価が極端に低い場合
    例えば、先発医薬品の価格が10円以下の薬の場合、ジェネリックを選んでも患者の経済的な恩恵はほとんどないことが多いです。医療費削減という点でも大きな影響がないため、無理に変更する必要はないでしょう。

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4. 薬剤師が提案する医療費節約術

4-1. 後発医薬品(ジェネリック)を選択する

今回の負担増に対して、最も単純かつ明快な解決策の一つが後発医薬品(ジェネリック)を選択することです。個人的にも、いくら後発品が安全安心で効果が同じだと言われても、どうしても納得できないという方がいますが、それ以外の方にとっては、今こそ後発医薬品を試す良い機会だと思います。試してみると、意外とすんなり受け入れられるかもしれません。さらに、多くの方が後発品を選択すれば、医療費全体の削減にも貢献できます。

4-2. 先発医薬品と後発医薬品の薬価差を確認し、医師や薬剤師に相談する

先発医薬品と後発医薬品の薬価差は、薬によって大きく異なります。特に薬価が高い先発品ほど、後発医薬品との価格差が大きい傾向があります。薬局で処方薬を受け取る際、先発品を選んでいる場合は、一度薬価の差を確認してみることをお勧めします。基本的に、後発医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を含み、効果や副作用も同等です。ただし、添加物などには違いがあるため、何らかの不安がある場合は、医師や薬剤師に相談し、自分に合った選択をすることが重要です。

さらに、現在ではインターネット上で簡単に薬価を調べることが可能です。例えば「薬価サーチ」などのサイトを使って、自分の飲んでいる先発薬の薬価を調べることができます。まず、検索欄に先発医薬品の名称を入力すると、一覧が表示されます。成分量を確認し、該当の薬品名をクリックすると、同じ有効成分を持つ後発医薬品も一覧で表示されます。薬価を降順で並べ替えれば、最も高い後発品から順に確認できます。

負担が増えたと感じる場合、まずは薬価差の大きい薬を後発医薬品に切り替えることで、家計への影響を軽減することができるかもしれません。医療費負担の増加を感じた際には、こうした選択肢を試してみる価値が十分にあります。

4-3. 処方される薬の数量が多い場合、ジェネリック医薬品を試してみる

処方される薬の数量が多い場合、1単位あたりの増額分は小さくても、全体の負担増加が無視できない額になることがあります。たとえば、1日3回飲む内服薬や2錠ずつ飲む場合、大量に使用する外用薬などが該当します。

例えば、ヒルドイドソフト軟膏は特許切れ薬の一例で、アトピー皮膚炎の患者さんが月に300~500g使用することがあります。月に300g使用する場合、約970円の負担増になります。このような場合、特に敏感肌の方はジェネリック医薬品の添加物の違いによって影響が出る可能性もあるため、まずは少量を調剤してもらい試してみるのも一つの方法です。

また、ジェネリック医薬品は、原薬の有効成分が同じであることが基本ですが、製造過程での改良が施されていることもあります。たとえば、錠剤の飲みやすさが向上していたり、湿布がかぶれにくくなっていたり、塗り薬の使用感が改善されていることがあります。これにより、元の製品よりも使いやすい場合もあるため、適切に選択することで生活の質が向上する可能性があります。

4-4. 1割負担患者の相対的負担増の考慮

今回の負担増分は、保険適応外になるということに大きな意味があります。負担額が全員同じようにかかるため、1割負担の方は相対的な負担の割合が大きくなり、より強い負担を感じることになります。特に医療費が生活に与える影響が大きい高齢者にとって、このような変化が家計にどのような影響を及ぼすかを十分に考慮することが重要です。以下に例をあげるので参考にしてください。

例:先発医薬品が500円で後発医薬品が300円で、先発医薬品を飲み続ける場合
(ⅰ)1割負担の後期高齢者などの場合
 通常の自己負担:先発医薬品500円×負担割合1割(0.1)=50円
 10月以降の負担:(先発医薬品500円ー後発医薬品300円)×1/4+通常の自己負担50円=100円
 相対的負担割合:10月以降の負担100円÷通常の自己負担50円=2倍

(ⅱ)3割負担の場合
 通常の自己負担:先発医薬品500円×負担割合3割(0.3)=150円
 10月以降の負担:(先発医薬品500円ー後発医薬品300円)×1/4+通常の自己負担150円=200円
 相対的負担割合:10月以降の負担200円÷通常の自己負担150円=1.3倍強

このように、負担増額分が同じであっても、実際に計算してみると精神的負荷はかなり異なることがわかります。

4-5. 処方された薬を正しく保管し、使用期限を守る

たとえ後発医薬品で節約できたとしても、薬が余りすぎて廃棄することや、使用期限切れで無駄になることがあれば、経済的な利益が損なわれるだけでなく、環境にも悪影響を及ぼします。下記の基本的な管理を徹底することで、医療費の無駄を防ぎ、健康を守ることができます。

(1)適切な保管条件
薬は通常、直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所で保管します。薬によっては特別な保管条件が指定されることがあります(例:冷所、遮光)。これらの条件がある場合は、指示に従って保管することが重要です。

(2)使用期限の確認
内服薬:ニトログリセリン製剤など一部の例外を除き、PTPシートには使用期限が記載されていないことが一般的です。そのため、長期間服用が続く薬については、薬剤師に依頼して薬袋に使用期限を記載してもらうようにすると安心です。ただし、一包化された薬(複数の薬をPTPから出し1回分ずつまとめて1つの袋にしたもの)は湿気や光に弱くなるため、使用期限に関係なく早めに服用することが推奨されます。

外用薬:多くの外用薬では、チューブや湿布などの外装に使用期限が記載されていることが一般的です。購入時や処方された際に、外装を確認して期限内に使い切るように心がけましょう。

(3)残薬の管理
残薬が増えると、保管場所が適切でなくなる可能性があり、服薬スケジュールにも問題が生じることがあります。残薬が多い場合は、医師や薬剤師に相談し、処分方法や調整方法についてアドバイスを受けることが大切です。また、お薬手帳を活用することで、残薬や服薬スケジュールを適切に管理でき、医療機関とのコミュニケーションも円滑に進むため、無駄を減らす一助となります。

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5. まとめ

  • 特許切れ医薬品とは、特許保護が終了した先発医薬品のこと。特許期間は原則20年だが、実際の独占販売期間は約10~15年。この期間中に開発されたジェネリック医薬品は、同じ有効成分と効能を持ちながら、開発コストが低く価格が大幅に抑えられるため、患者の自己負担軽減に貢献できる
  • 負担増に踏み切った背景は、高齢化に伴う医療費の増加が続く中、政府は持続可能な医療制度の確保を目的に特許切れ医薬品の患者負担を増加させる方針を採用。後発薬は数量ベースで普及しているが、金額ベースでは不十分であり、先発薬選択時の追加負担が医療費高騰の抑制に必要とされている
  • 今回の負担増はすべての医薬品には適用されるわけでなく、「後発医薬品が発売された翌月から5年以上経過している医薬品(バイオ医薬品を除く)」、「後発薬が全体の半数以上使用されている医薬品」これらの項目を満たす1,095品目の特許切れ医薬品が適用となる。
  • 今回の負担増対象者は、特許切れ医薬品が処方され、医療上の必要性がないにもかかわらず患者が「先発品」を希望した場合にのみ対象。医療上の必要性とは、後発薬で副作用がある場合や特定の効果が期待できないと医師が判断したケースを言う。嗜好による希望(味や使用感など)は対象外、錠剤の大きさなど物理的に問題となる場合は考慮される可能性もある。
  • 負担増の計算は、先発薬と後発薬(後発薬が複数ある場合、最も高い薬価が基準)の価格差の4分の1が保険適用外となり、その分が患者の自己負担に追加されるため、通常の1〜3割負担に加え、さらなる負担が発生する。
  • 近年、政府の政策によるジェネリック医薬品の急激な推進が進み、需要過多により製薬会社に大きな負担がかかっている。利益優先の考えも重なり、いくつかの製薬会社で不正が発覚した。これを契機に、チェック機関や製薬会社、医療に関わるすべての者が制度やガバナンスの改善に取り組み始めた。これにより、今後は医薬品の品質がさらに向上することが期待される。
  • 医療費を節約するためには、まず負担増の対象にならないことが重要であり、そのためには後発品を選択することが基本である。しかし、どうしても後発品を受け付けない場合は、薬価差が大きいものや数量の多いものから試すことが推奨される。これにより、少しずつ負担を軽減できる可能性がある。ただし、最も大切なのはお薬手帳を活用し、薬を正しく管理して残薬を減らし、無駄を防ぐことである。

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