花粉症治療完全治療ガイダンス

季節性・流行性疾患

1. 花粉症のメカニズム

花粉症の発症メカニズムは、免疫系の過剰反応によるものです。通常、ヒトの免疫系は体内に侵入した異物や病原体を検知し、それらを排除するために働きます。花粉症の場合、花粉などのアレルゲンが体内に侵入すると、免疫系がこれを異物と認識して反応を引き起こします。この反応により、特定の抗体(IgE抗体)が生成されます。

初回の接触でIgE抗体が生成され、再び同じアレルゲンに触れた際に、これらの抗体が過剰に反応し、炎症や症状を引き起こします。くしゃみや鼻水などの症状は、体が異物を排除しようとする自然な反応ですが、花粉症の場合は過剰な反応が起こります。

花粉症の症状が悪化すると、鼻づまりや目のかゆみ、皮膚のかゆみなどが現れ、日常生活にも大きな影響を及ぼします。このように、免疫系の過剰反応が花粉症の症状を引き起こす仕組みとなっています。

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2. 花粉症の地域発症率

日本で圧倒的に花粉量が多いのは、スギ、ヒノキの花粉になります。これらスギやヒノキ多く植えられている中部地方や、コンクリートが多く花粉が散乱しやすい関東地方が発症率が高いです。逆に、北海道沖縄はスギやヒノキが極端に少ないため、飛散している花粉量も少なく花粉症患者もかなり少ないです、毎年ツラい花粉症に悩まされている方は、移住を考慮に入れて良いかもしれません。

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3. 花粉症のさまざまな症状

花粉症の典型的な症状には、鼻水くしゃみ鼻づまりがよく見られます。これらは一般に「三大症状」と呼ばれています。花粉が体内に入ると、アレルギー反応が始まり、最初にヒスタミンという物質が生成されます。この物質によって、鼻水やくしゃみなどの症状が引き起こされます。その後、しばらくするとロイコトリエンという物質が生成され、これが血管を刺激して鼻づまりを引き起こす原因となります。

花粉症が引き起こす影響は、単に目や鼻の症状だけではありません。日常生活における花粉症の影響に関するアンケート結果では、仕事や勉強家事などへの支障が最も多く報告されています。また、思考力や集中力の低下も頻繁に挙げられています。さらに、疲労感や倦怠感うつ症状などの精神的な影響もあります。

これらの影響は、とても厄介なことに本人が自覚しないうちに現れることがあります。しかし、これらの影響を認識していれば、適切な対策や治療を行うことができるかもしれません。つまり、花粉症が日常生活に与える悪影響を理解することは、適切な対処法を見つける上で重要です。

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4. 花粉症の予防法

花粉症を予防する最も効果的な方法は、体内に花粉を入れないことです。そのために最も有効な手段は、マスクの着用です。外出時にマスクを着用するかしないかで、鼻腔内に侵入する花粉の量が大きく変わることが報告されています。

さらに、他の予防方法としては、メガネの装着うがいや洗顔帰宅後の服の清掃、部屋の掃除などの基本的な衛生習慣を実践することが挙げられます。これらの対策を行うことで、体内に入る花粉の量をかなり減らすことができます。

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5. 花粉症の内服治療薬

5-1. 抗ヒスタミン内服薬

第一に、花粉症の主要な原因は、前述した通りヒスタミンです。ヒスタミンは主に鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどを引き起こし、そのために内服薬は基本的には抗ヒスタミン薬が治療に用いられます。抗ヒスタミン薬には、内服薬、点鼻薬、目薬など、症状に応じてさまざまな形態があります。ただし、抗ヒスタミン薬には眠気ふらつき集中力低下などの副作用があり、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

a. 眠気がほとんどないタイプ

一般名商品名服用法後発品剤型市販薬
デスロラタジンデザレックス1日1回✖️該当なし
ビラスチンビラノア1日1回✖️錠・口該当なし
フェキソフェナジンアレグラ1日2回錠・口・ド1アレグラFX、アレルビ、ケアビエン、
フェキソフェナジンα、AG、STなど
ロラタジンクラリチン1日1回錠・口・ドクラリチンEX、ロラタジンAG、RXなど
剤型略語; 口: 口腔内崩壊錠(OD錠)、ド: ドライシロップ(DS)

b. 比較的眠気を抑えられているタイプ

一般名商品名服用法後発品剤型市販薬
エバスチンエバスチン1日1回錠・口エバステルAL(現在生産終了)
エピナスチンアレジオン1日1回錠・ドアレジオン20、エピナスチンRX、ナブルシオン20など
オロパタジンアレロック1日2回錠・顆・口該当なし
ベポタスチンタリオン1日2回錠・口タリオンAR
剤型略語; 口: 口腔内崩壊錠(OD錠)、顆; 顆粒剤、ド: ドライシロップ(DS)

c. 眠気がやや出やすいタイプ

一般名商品名服用法後発品剤型市販薬
アゼラスチンアゼプチン1日2回アレジンAZ錠、ムヒAZ錠
セチリジンジルテック1日1回錠・ド新コンタック鼻Z、ストラリニZジェル
メキタジンゼスラン
ニポラジン
1日2回錠・細・シムヒDC速溶錠
ルパタジンルパフィン1日1回✖️該当なし
剤型略語; 顆; 顆粒剤、ド: ドライシロップ(DS)

cのタイプは特に車の運転や危険な仕事の従事などにはかなり注意が必要です。個人差があり何も感じない方もいますが、人によってはがまんできないほどの眠気が出ることもあります。
また、aのタイプはほとんど眠気がないとされていますが、感受性が強い方であると出る恐れもあるため注意が必要です。

5-2. 抗ロイコトリエン剤

もう一つの主要な症状である鼻づまりの原因は、前述の通りロイコトリエンという物質になります。したがって、抗ヒスタミン薬だけでは不十分です。多くの場合、症状が重なることがありますので、抗ロイコトリエン薬と抗ヒスタミン薬を併用することで効果が高まります。また喘息を併発されている方には特に推奨されています。抗ロイコトリエン薬は市販されておらず、処方箋が必要です。

一般名商品名服用法後発品剤型市販薬
プランルカストオノン1日2回錠・カ・ド該当なし
モンテルカストキプレス
シングレア
1日1回錠・ド該当なし
剤型略語; カ: カプセル剤、ド: ドライシロップ(DS)

5-3. ステロイド・抗ヒスタミン配合剤

抗ヒスタミン薬では効果が現れるまでに時間がかかる場合や、症状が深刻な時には効果が不十分なことがあります。このような場合に対応できるのが、抗ヒスタミン薬とステロイド剤が配合された薬です。ただし、ステロイド内服剤には免疫低下などの全身性のものや、消化性潰瘍など多くの副作用があります。そのため、基本的には症状が非常にひどい場合にのみ使用し、かつ、医師の指示に従って正しく使用する必要があります。
市販薬はなく医療用医薬品として処方箋でのみ手に入り、すべて同一成分で、セレスタミン、サクコルチン、エンペラシンなどの薬があります。

一般名商品名服用法後発品剤型市販薬
ベタメタゾン/
d-クロルフェニラミン
配合剤
セレスタミン1日1〜4回錠・シ該当なし
剤型略語; シ: シロップ剤

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6. 外用治療薬

6-1. 点鼻薬

点鼻薬には主に3種類あります。それぞれの種類によって異なる効果がありますので、症状や程度に応じて適切な点鼻薬を選びましょう。

6-1-1. ステロイド点鼻薬

現在の主流となっている点鼻薬で、耳鼻科などで数多く処方されます。軽度な症状から毎日定期的に使用することで、ピーク時期の悪化を抑えることができます。鼻水、くしゃみ、鼻づまりの3大症状を抑える効果があります。

ステロイド点鼻薬にはいくつかの誤解があります。まず、副作用に関するものです。薬の成分は主に患部に効果を発揮し、ほとんど体内に吸収されません。したがって、副作用は局所的なものであり、免疫抑制や消化性潰瘍などはほとんど心配ありません。

また、即効性に関しても誤解があります。ステロイドは強力なイメージがありますが、点鼻薬には即効性がありません。したがって、一度使用してもすぐに効果を感じることはありません。1日1回の使用で済む便利な製品もありますので、毎年鼻づまりなどに悩まされる方は、安定して症状が落ち着くまでは継続することをお勧めします。

一般名商品名使用法後発品市販薬
デキサメタゾン
シペシル酸
エリザス1日1回
1回1噴霧
✖️該当なし
フルチカゾン
フランカルボン酸
アラミスト1日1回
1回2噴霧
該当なし
フルチカゾン
プロピオン酸
フルナーゼ1日2回
1回1噴霧
フルナーゼ点鼻薬
ベクロメタゾン
プロピオン酸
該当なし21日2回
1回1噴霧
エージーアレルカットEXc
ナザールαAR
パブロン鼻炎アタックJL
モメタゾン
フランカルボン酸
ナゾネックス1日1回
1回2噴霧
該当なし

6-1-2. 血管収縮剤

鼻炎がどうしてもつらい、この時間帯のみ改善したいなど即効性を期待する場合があります。そのような時に最も有効なのが、この血管収縮剤です。正しい使い方さえ守ればとても有用な薬なのですが、繰り返し使用すると効果が小さくなってしまい、しまいには逆に粘膜の炎症を起こし、逆に鼻閉を起こし悪化する可能性もあります。

また、パーキンソン病やてんかんの治療に用いられている、MAO阻害薬を服用している方は使用できません。これは、過剰な血管収縮が起こり、血圧が急激に上昇するリスクがあります。これにより、高血圧危機(急激な血圧上昇による脳卒中や心不全などのリスク)や心臓発作などの重篤な副作用が発生する可能性があるためです。

一般名商品名使用法後発品市販薬
オキシメタゾリン該当なし31日1〜2回
1回2〜3噴霧
ナシビンMスプレー
テトラヒドリゾン
(プレドニゾロン含有)
コールタイジン数時間ごと
1回2〜3噴霧
コールタイジン点鼻薬
トラマゾリン該当なし1日数回
1回2〜3滴
該当なし
ナファゾリンプリビナ1日数回
1回2〜4滴
フルナーゼ点鼻薬

6-2. 点眼薬

点眼薬もその目的に応じて主に3種類があります。またコンタクト装着時も、その種類によりとても注意すべき点があるため、以下を参照してください。

6-2-1. 抗アレルギー点眼薬

一般名商品名服用法後発品市販薬
エピナスチンアレジオン1日4回該当なし
アレジオンLX1日2回✖️該当なし
オロパタジンパタノール1日4回該当なし
クロモグリク酸該当なし1日4回スタディーALG4
マリンアイALG
ケトチフェンザジテン1日4回アイリスAGガード

【コンタクト装着時の目薬使用上の注意】
ソフトコンタクトレンズを普段ご使用の際に、目薬を使用する際には注意が必要です。目薬には通常、防腐剤が含まれており、主に塩化ベンザルコニウムという成分が使われています。この防腐剤はソフトコンタクトレンズに吸着しやすく、直接目に付着すると目を傷つけたり、コンタクトレンズそのものに変形や変色を引き起こす可能性もあります。したがって、目薬を使用する際には、必ずコンタクトレンズを外してから行うようにしてください。なお、カラーコンタクトレンズに関しては特に注意が必要です。

一方、ハードコンタクトレンズワンデーコンタクトレンズに関しては、一般的に問題ありませんが、酸素透過性の高いコンタクトレンズについては外した方が良いとされています。

そこで医用用医薬品の中で現在唯一塩化ベンザルコニウムが入っていない、アレジオン点眼液(LX含む)がとても有用です。眼科にかかったときは、医師にコンタクトレンズを使用している旨を伝えて処方してもらうと良いです。

6-2-2. ステロイド点眼薬

ステロイドの目薬は、即効性が非常に高く、よく用いられる薬ですが、副作用が問題になることがあります。特に代表的な副作用として、眼圧上昇が挙げられます。無闇な長期使用は、ステロイド緑内障と呼ばれる元に戻りにくい状態を引き起こす可能性があります。そのため、医師や薬剤師の指示に従い、悪化時に限定して使用することが重要です。

一般名商品名使用法後発品市販薬
フルオロメトロンフルメトロン1日2〜4回該当なし

6-2-2. 免疫抑制剤

以前は春季カタル5などの重症例には、ステロイド点眼薬を使用する必要がありました。しかし、近年、元々内服薬として存在していた成分が点眼薬として開発され、現在では2種類の目薬が処方されています。これにより、ステロイド点眼薬の最大の懸念であった眼圧上昇を気にせずに使用できるようになりました。ただし、重症度によっては、ステロイド点眼薬も併用することがあります。

免疫抑制剤は副作用が気になるところですが、使用が局所的であるため、全身的な副作用はほとんど心配する必要はありません。ただし、目の感染症には十分な注意が必要です。

一般名商品名服用法後発品市販薬特記事項
シクロスポリンパピロックミニ1日3回✖️該当なし1回使い切りタイプ
タクロリムスタリムス1日2回✖️該当なし懸濁剤のため、よく振ってから使用

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7. 花粉症の新しい治療法

これまで紹介した薬は、すべて症状の軽減や管理に焦点を当てた対症療法であり、長期間の使用が必要です。しかし、スギ花粉に限定されますが、舌下免疫療法が開発されました。これは減感作療法で、簡単に言えば、少量ずつアレルゲンを体内に摂取し、体内でアレルゲンを徐々に慣れさせていくものです。これは従来の治療法とは全く異なります。

 この治療は花粉症の流行期間中に行うと悪化する可能性があるため、その期間を避けて6〜12月の間に行います。通常、3〜5年の間継続され、即効性を期待するものではありません。効果としては、2割が完治し、6割が症状の改善を実感し、残りの2割は効果が見られないとされています。この治療法は、鼻づまりだけでなく、目のかゆみや集中力低下など、花粉症が引き起こすあらゆる症状に効果があります。また、治療終了後も薬物使用量を長期間にわたり減らすことが期待されます。

軽微な副作用としては、口内の腫れやかゆみなどが挙げられます。また、特に初回投与時には、アナフィラキシーショックを起こす可能性があるために、専門の医師のもとで使用します。

商品名服用法後発品市販薬特記事項
シダキュア花粉舌下錠1日3回✖️該当なしダニアレルギーにも効果

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8. 花粉症のまとめ

  • 花粉症患者は過去20年で約2倍に増加し、現在も増加傾向にある。
  • 花粉症は鼻水、くしゃみ、鼻づまりが主症状であり、他にも集中力が落ちるなど自覚できないような、日常生活にも悪影響がある。
  • 予防はマスクが第一、他なるべく清潔にして花粉を体内に取り込まないこと。
  • 内服は抗ヒスタミン薬の継続が基本、眠気などの少ない薬は即効性はないため予防的に早めに始めることが重要。ステロイドは全身性の副作用もあり、通常は悪化時のみ。
  • 鼻炎にはステロイド点鼻薬がよく用いられ、全身性の副作用はほぼなく効果も比較的高い。血管収縮剤は即効性はあるが、使いすぎにより効果の減弱や反跳現象があり逆に悪化することもある。
  • 目薬は、抗ヒスタミン剤と悪化時のステロイド剤を使い分ける。春季カタルなど重症例には、副作用の多いステロイド剤の代わりに免疫抑制点眼薬が使用される。
  • スギ花粉に対しては免疫療法もあり、正しい服用で2割がほぼ完治、6割は症状の改善がある。

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