1. 「アライ」はどのようにして脂肪を減らすのか
端的に言うと、「アライ」は食事からの脂肪吸収を妨げることで体内脂肪を減らします。食事から摂取される脂質は、糖質など他の栄養素と同様に長い鎖状で存在し、これらは酵素によって分解されて体内に吸収されます。脂質は特に、リパーゼという酵素によって分解されますが、「アライ」はこの酵素の働きを抑制し吸収されずに便として出されます。食事から摂取した脂質のうち、1/4程度を排出するようです。このため、脂質を常に多く摂取する人にとっては効果的です。
2. 「アライ」はどんな人に向いているの?
「アライ」の効果は一般的にどのような人に適しているのでしょうか?資料によれば、「アライ」は腹部に脂肪が蓄積している方の内臓脂肪を減少させる効果があるとされています。したがって、明らかにお腹周りが気になる方や、ビール腹のような見た目がある方にとっては効果的かもしれません。さらに、大前提として、「脂肪減少効果は基本的には食事や運動などの生活習慣の改善によるものである」とのことより、今まで生活習慣を正しているのになぜか痩せない・・・という人が特に向いているようです。一方、腹囲が普通であっても、体型をもう少し引き締めたいと考えている方には効果が少ないかもしれません。ここでいう「太め」とは、男性で腹囲が85cm以上、女性で腹囲が90cm以上という基準です。したがって、思ったより平均よりも相当に腹囲の大きい方という印象がありますね。
「アライ」の作用メカニズムを考慮すると、そこまで腹囲の大きい方でなくても、揚げ物やスナック菓子など脂肪の多い食品をよく摂取する方に対しては効果が期待できるかもしれないですけど、どうなんでしょうか?
3. 「アライ」の購入はどうするの?
「アライ」は要指導医薬品というカテゴリーに属しています。要指導医薬品は、対面販売が義務付けられています。つまり、Amazonや楽天市場などのインターネット経由では購入できず、薬剤師が常駐する薬局や薬店で、薬剤師からの説明や指導を受けた後に購入する必要があります。
また、購入の条件として、以下の3つが挙げられます。
- 18歳以上の方
- 特定の腹囲基準を満たす方(先述の項目を参照)
- 運動や食事などの生活習慣改善を実践している方
特に条件3.では、購入前1ヶ月間および購入後の定期的な生活習慣の改善がなされているかの記録の確認が求められます。(一部薬局では、購入後では不要な場合もありましたが、通常は確認必須)。ここで購入ごとに記録が必要なことは、相当手間に感じるのではないでしょうか。そもそも自分でこういう管理ができる人は、体型を保てていると思われるので何か矛盾みたいなものを感じます。むしろだからこそ、このような条件をつけているのでしょう。
4. 「アライ」はどの程度の効果が出るの?
なにはともあれ、効果がどれほどなのか?が一番気になるところでしょう。同メーカーによると、摂取後4週間から効果が期待でき、1年間かけると内臓脂肪面積で約21.5%、腹囲で4.8%の減少1が確認されているとのことです。腹囲はそこそこですが、内臓脂肪に関してはなかなかの減少率なのではないでしょうか?
以下メーカーHPより、プラセボ(偽薬)群と比較した表を記したので参考にしてください。
内臓脂肪面積 | 12週間 | 24週間 | 最終評価 |
---|---|---|---|
プラセボ | -2.28% | -5.78% | -5.45% |
アライ群 | -6.79% | -14.10% | -13.50% |
腹囲 | 4週間 | 12週間 | 24週間 | 最終評価 |
---|---|---|---|---|
プラセボ | -0.17cm | -0.87cm | -1.63cm | -1.53cm |
アライ | -0.62cm | -1.38cm | -2.49cm | -2.41cm |
5. 「アライ」によるデメリットは?
「アライ」の成分であるオルリスタット自体は、体内にほぼ吸収されないため化学的な意味での害は少ないです。肝障害や腎結石などが副作用としてあるようですが、少し気に留めておく程度で良いでしょう。
むしろ気にすべきは、日常生活における実害です。「アライ」は海外では1998年から販売されており、海外からはすでに購入自体はできます。ネット上でそれらの方の服用した感想を見たのですが、相当やっかいな面もあることになるようです。以下それらの感想を踏まえて実害を挙げていきます。
⑴(放屁を伴う)便または油の漏れ
実害の中で1番ヤバそうなのがこれでした。日中など活動中に何気なくお尻から油が流れ出てきたり、放屁した際に油まみれの水様便が飛び出てくることがあります。しかも臭いが相当きついものを伴います。人により頻回あれば、学業や仕事にかなり支障をきたすでしょう。また寝ている間も出てくるようで、高価なベッドを捨てる羽目になったという意見もありました。また、トイレも油まみれになり掃除がめちゃくちゃ大変になることもあるようです。
【対策】上記の症状は、特に服用早期に発現することが多く、次第に収まってくる傾向にあるようです。よって特に飲み始めは、脂っこい食事を控えると良いでしょう。また外出時で万が一出た時用に、オムツや便漏れパッドも必要かもしれません。
【体験談】私が1ヶ月以上試してみての結果です。説明書通り最初の2週間は、何も予感がない状態から油を漏らしたことがあります。2回くらいベッドを汚し、外出時でも1回危ない場面がありました。学校や会社通いの方の使用はなかなか難しいと感じます。ニオイもとても強烈で、部屋がしばらく臭くなりました。薬が慣れてくると突然ということはなくなりますが、トイレで排便時に油は継続的に混ざってくるため、トイレがとても汚れる恐れがあります。
⑵脂溶性の栄養素の流出
油を排出するということは、油に溶けやすいものも流れ出てしまうということです。具体的にいうと、脂溶性ビタミンの、ビタミンAやD、EおよびKなどです。特にビタミンE(βカロテンなど)が不足しがちになります。
【対策】脂溶性ビタミンの入ったマルチビタミン剤を補給することです。ただし、「アライ」継続中に同時に摂ると、結局また吸収が阻害されがちです。よって「アライ」とは2〜3時間ずらして摂るべきでしょう。
【体験談】油漏れと下腹部の鈍痛以外の栄養不足のような弊害らしきものは、特別ありませんでした。ただし、たまたま脂溶性の薬を飲まないといけなくなり、それをアライと一緒に飲むことで効果が減弱したことがありました。そこは注意が必要だと思います。
⑶生活習慣の改善の取り組みと確認
これは購入のたびに、わざわざ確認が入るのかはまだ不明ですが、相当煩わしさを感じる人も少なくないかと思います。もちろん生活習慣の改善自体は、とても重要であることは言うまでもないことです。
【対策】アライ購入用のアプリがあるようで、スマホから簡単に記入できるようです。紙を用意して記載するより、そちらの方が簡単にできるかもしれません。
6. 「アライ」と一緒に飲んではいけない薬
シクロスポリン製剤(免疫抑制剤)、抗HIV剤(エイズ治療薬)、ワーファリン等の抗凝固薬が影響を多く受けるため、服用している方は「アライ」は併用できません(ワーファリンがいけない理由はビタミンK関連に対し、作用を増強することによる出血傾向のためだと思われるのですが、他に関係のある抗凝固剤があるのでしょうか?)。薬の効果が弱まったり強まったりして、体に著しい影響が出てしまう恐れがあるためです。
また、アミオダロン製剤(抗不整脈薬)、レボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)、抗てんかん薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬、経口避妊薬も影響を受ける可能性があるため注意が必要のようです。
※説明書には載っていないが、注意すべき併用薬
説明書には記載されていませんが、「アライ」の脂質排泄作用を考慮すると、脂溶性の高い薬を同時に摂取した際に、その薬の吸収が妨げられる可能性があります。特に、食後すぐに服用する薬に影響が出やすいです。例えば、抗真菌薬「イトラコナゾール」などは、その代表例です。このため、現在服用中の薬と「アライ」の併用については、事前に医師や薬剤師に相談することを強く推奨します。
7. まとめ
- 内臓脂肪減少薬として、日本で初めて市販された薬である。
- その作用は食事由来の脂分の吸収を1/4カットするものである。
- 脂肪減少には基本は生活習慣の改善であり、「アライ」は補助としてのものでやせ薬ではない。
- 要指導医薬品であり、購入は実店舗の薬局や薬店から、薬剤師の説明を受ける必要がある。ネットからの購入は不可。
- 有効性は生活習慣改善と併用することで、1年間継続にて内臓脂肪面積が約21.5%減少する。
- 弊害としては日常生活における実害が主であり、不定的にお尻から油を伴った便などが出て、臭いも伴うこともある。
最後に、個人的な意見としては、これを見て使おうと思う人はかなり少ないのではないのかな?という印象です。生活習慣の取り組みと記録は何とかなるでしょうが、油や便を伴う放屁が如何ともし難いですね。ただし、食事の摂り方でいくらか対応できたり、続ければ治まってはくるらしいので、もう少し多くの方の感想を待ちたいです。みなさんは使ってみたいと思いますか?
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