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1. はじめに ─ 今年のインフルエンザは「サブクレードK」が主流に
今シーズンのインフルエンザは、例年よりも早い立ち上がりを見せています。その中心にあるのが、A型(H3N2)の新たな変異株「サブクレードK」です。厚生労働省が12月1日に公表した最新資料脚注[1]によれば、このサブクレードKの検出割合は急速に増加しており、今季の流行を牽引する存在となっています。
さらに、11月下旬の定点医療機関あたりの新規感染者数は、過去10年の同時期でも最多となっており、流行の勢いが例年とは異なることが浮き彫りになっています。
従来株と比べてどのような特徴を持ち、私たちの健康や社会生活にどのような影響を及ぼすのか──本記事では厚労省の発表を基盤に、最新の知見を整理しながら、今シーズンのインフルエンザへの向き合い方を考えていきます。
2. 変異株サブクレードKとは?
厚生労働省が公表した最新の解析によると、今日本で流行しているA型インフルエンザ(H3N2 =いわゆる“香港型”)の多くが、新しい系統である「サブクレードK」というタイプに置き換わっています。実際に、検出されたH3N2株の約96%がサブクレードKで占められており、今シーズンの主流株となっていることが分かっています。
この「サブクレードK」は、新型インフルエンザではなく、従来の季節性H3N2が遺伝子変異を重ねる中で形成された系統のひとつです。インフルエンザウイルスは「型(A型・B型)→亜型(H1N1・H3N2など)→クレード(系統群)→サブクレード」という階層で分類され、サブクレードはさらに細かい遺伝子変異の違いによって区別されます。
3. 症状と重症化リスク ─ 従来株との違いは?
現時点で公的機関の評価としては、サブクレードKによる症状は従来の季節性インフルエンザ(H3N2)と大きな違いは認められていません。典型的な症状は以下の通りです。
- 高熱(38℃以上の発熱)
- 強い倦怠感
- のどの痛み
- 咳や鼻症状
これらは従来株と同様に、急激な発症と全身症状を特徴としています。
現時点で公的機関から示されている情報では、「サブクレードKだから特別に重症化しやすい」という科学的根拠は確認されていません。重症化リスクは従来のH3N2と同程度と考えられており、特に高齢者、基礎疾患を持つ方、小児などでは従来通り注意が必要です。
4. 変異型に対するワクチンの効果
今シーズンのワクチンに含まれるH3N2株と、現在流行の中心となっている「サブクレードK」との間には、抗原性が異なる可能性があると厚生労働省は指摘しています。抗原性とは、ウイルス表面の「目印」のようなもので、免疫がそれを頼りにウイルスを攻撃します。
例えて言えば── 従来株のウイルスは「同じ形の鍵穴」を持っており、ワクチンによって作られた抗体(鍵)がぴったりはまる仕組みでした。ところがサブクレードKでは、その鍵穴の形が少し削られたり歪んだりしているため、抗体がはまりにくくなり、感染予防効果がやや下がる可能性があります。
また、サブクレードKではウイルス表面に糖鎖が増えることで、ウイルス表面が“コーティング”されたようになり、抗体から隠れやすくなる──いわゆる「グライカンシールド」という現象が起こると考えられています。こうした抗原性の違いが、感染予防効果の低下につながる一因とも言われています。
一方で厚労省は、重症化を防ぐ効果は現時点でも維持されると考えられるとしています。抗体が完全に一致しなくても、ウイルスの増殖を抑え込むことは可能であり、発症後の重症化や合併症を防ぐ点では、ワクチン接種の意義は引き続き大きいと考えられています。
なお、日本では不活化ワクチンが使用されており、接種後すぐに免疫が立ち上がるわけではありません。個人差はありますが、抗体などの免疫応答が整うまでにはおおよそ 2 週間程度かかるとされています。
そのため、流行期の真っただ中では、できるだけ早めに医療機関を受診し、ワクチン接種を済ませておくことが推奨されます。
5. 治療薬は従来通り有効?
5-1. 変異株に対する抗ウイルス薬の有効性
現在国内で使用されている抗インフルエンザ薬──オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、バロキサビル/マルボキシル(ゾフルーザ)などは、いずれもウイルスの増殖を抑える作用を持つ薬です。厚生労働省の資料でも、サブクレードKに対して従来薬が“理論上有効と考えられる”と示されています。
これらの薬は、ウイルスが体内で増える過程をどこかしらで止める働きを持ち、できるだけ早期に投与することで症状のピークを抑え、重症化や合併症の予防につながるとされています。特に、発症から48時間以内に治療を開始すると、発熱期間を短縮し、肺炎などの合併症リスクを減らす効果が知られています。
従来株と同様、サブクレードKに対しても「いかに早く治療を開始できるか」が重要なポイントです。高齢者、乳幼児、基礎疾患のある方では早期受診が重症化予防に直結するため、症状が出た段階での早めの判断が大切です。
5-2. 各ウイルス薬の特記事項
かつて抗ウイルス薬の代表であるタミフルと異常行動の関連が話題になりましたが、厚労省の検証では明確な因果関係は認められていません。現在では、異常行動は“インフルエンザそのもの”によって起こり得る症状と整理されています。いずれにしても、薬の有無にかかわらず、小児では発熱初期の見守りが重要です。
バロキサビル/マルボキシル(ゾフルーザ)は、一回の服用で治療が完結する利便性を持つ抗インフルエンザ薬です。しかし、12歳未満の小児ではウイルスの増殖量が多く、免疫機能も未成熟であるため、投与後にウイルスが残存しやすいとされています。その結果、I38T変異を代表とする耐性株の出現が比較的高頻度で報告されています。このため、小児においては「服用の手軽さ」という利点と「耐性リスク」という懸念の両面を考慮し、慎重な投与判断が求められる薬剤と位置づけられています。
6. 今シーズンの注意点 ─ 例年以上に早い流行
厚生労働省の報告によれば、今シーズンのインフルエンザは例年より早い段階から流行が始まっていることが確認されています。すでに9〜10月の時点で感染者数が増加し、全国的に「早期流行」と呼べる状況が認められました。
この背景には、サブクレードKの抗原性の違いに加え、人の移動が活発になる年末年始や、乾燥した冬の環境が重なることで、さらなる拡大が予想されます。特に乾燥は、ウイルスが空気中で長く生存しやすくなる要因のひとつです。
ただし、基本的な感染対策は従来と変わりません。
- 手洗い:外出後や食事前に流水と石けんでしっかり洗う
- マスク:咳やくしゃみの飛沫を防ぐだけでなく、自分を守る効果もある
- 換気:室内の空気を入れ替え、ウイルス濃度を下げる
これらはシンプルですが、最も確実な予防策です。つまり「新しい変異株だから特別な対処が必要」というわけではなく、従来の基本対策を丁寧に続けることが、今シーズンも最大の防御策となります。
手指消毒に関しては、こまめに行うことが大切です。推奨されるアルコール濃度は70〜80%程度で、厚生労働省やWHOのガイドラインでも有効性が確認されています。医療現場でも使用されている以下の商品を薬剤師としておすすめします。
- 健栄製薬 消毒用エタノールIPA スプレー式 500ml
発熱があり「インフルエンザかも?」と感じたときは、医療機関での検査が基本ですが、受診前に感染の可能性を確認しておくことで判断がしやすくなることもあります。最近では、インフルエンザ抗原検査キットを家庭で備えておく方も増えています。
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- 小林薬品 インフルエンザ A/B &抗原検査キット
7. 薬剤師から解熱剤ひと言アドバイス
インフルエンザの発熱時に「どの解熱剤を使えばよいか」は、よくある疑問です。ここでは公的機関や専門学会が示す注意点を整理します。
✔ 小児の解熱剤は「アセトアミノフェン」が基本
小児には NSAIDs(ロキソプロフェンなど)を原則使用しないことが推奨されています。 理由は、インフルエンザに伴う インフルエンザ脳症との関連リスクが指摘されているためです。 市販薬を選ぶ際は、必ずアセトアミノフェン製剤を選ぶことが安全です。
👉3歳以上のお子様から服用できるおすすめ市販薬
- 小児用バファリンCII(1錠中アセトアミノフェン33mg含有)
- 小児用バファリン チュアブル(1錠中アセトアミノフェン50mg含有)
✔ 大人も「むやみに下げすぎない」
解熱剤は “つらいときだけ使う” のが基本です。 発熱は体がウイルスと戦っているサインでもあり、無理に平熱近くまで下げると、回復が遅れるケースもあります。 例えば、38℃台でも食欲や水分摂取が保たれている場合は、必ずしも解熱剤を使う必要はありません。逆に、強い頭痛や倦怠感で生活に支障があるときには適切に使用することが望ましいとされています。
👉5歳以上から成人まで服用できるお勧め市販薬
- 大正製薬 アセトアミノフェン錠s 100錠(1錠中アセトアミノフェン100mg含有)
8. まとめ ─ 過度に恐れず、確かな情報で備える
今シーズンのインフルエンザは、A型(H3N2)の「サブクレードK」が流行の中心となっています。たしかに例年より早い立ち上がりを見せていますが、症状の重さや治療薬の有効性は従来の季節性インフルエンザと大きく変わりません。
押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 流行は例年より早い: 9〜10月から感染者が増加し、全国的に早期流行が確認されています。
- 症状・治療薬は従来通り: 典型的な症状が中心で、抗インフルエンザ薬も引き続き有効です。
- ワクチンの感染予防効果はやや低下の可能性: ただし、重症化を防ぐ効果は期待できます。
- 基本対策は変わらない: 手洗い・マスク・換気、そして免疫を保つ生活習慣が重要です。
つまり、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、確かな情報に基づいて冷静に備えることが、今シーズンを安心して乗り切る最良の方法です。
【参考資料】
- 厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課「インフルエンザウイルスのサブクレードKについて」(令和7年12月1日) ↩︎


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