【2025年8月】緊急避妊薬が年齢制限を撤廃へ!厚労省が市販化方針を提示

薬学

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1. はじめに

避妊、とりわけ緊急避妊薬(アフターピル)をめぐっては、ここ数年で制度や運用の変革が進んできました。試験的な処方箋なし販売の開始など一歩ずつ前進がある一方で、依然としてアクセスのしづらさや社会的なハードルが残り、望まない妊娠の問題は後を絶たないのが現状です。

2025年8月下旬、厚生労働省の薬事審議会において新制度の導入が了承されました。制度設計は大きく前進し、緊急避妊薬をめぐる仕組みが「試験的な枠組み」から「恒久的な制度」へと移行する節目を迎えています。

本記事は、過去に公開した
👉 『処方箋なしの緊急避妊薬、どこで買える?対応薬局と最新の販売状況』
を補足・アップデートする位置づけの内容です。先に過去記事をご覧いただいた上で、本記事をお読みいただくことをおすすめします。

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2. 緊急避妊薬についてのおさらい

緊急避妊薬については、前述の過去記事でも詳しく解説していますが、ここでも簡単に特性を整理しておきます。

緊急避妊薬(アフターピル)は、主に排卵を抑制や遅延させることで妊娠を防ぐ薬です。性交後に服用することで、およそ80〜90%の確率で妊娠を回避できるとされています。ただし 100%妊娠を防げるわけではありません。

効果を十分に発揮するためには、性交後の服用は早ければ早いほど良く、遅くとも72時間以内に服用することが推奨されています。

また、服用後はアフターケアも重要です。副作用の有無や体調確認に加え、効果判定のために服用からおよそ3週間後に妊娠検査や医療機関の受診を行うことが望ましいとされています。

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3. 今回の新方針について(2025年8月時点)

厚生労働省は2025年8月、緊急避妊薬(アフターピル)である「ノルレボ錠」に関する新たな方針を示しました。その主な内容は以下の通りです。

  1. 年齢制限を撤廃
    → 従来は16歳以上が対象でしたが、今後は年齢に関係なく購入可能になります。

  2. 未成年の保護者同意および同伴が不要化
    → 未成年(16〜17歳)は、これまで保護者の同意と同伴が必要でしたが、今後は不要となります。

  3. 薬局での対面販売を義務化
    → 購入時には薬剤師が直接説明を行い、その場で服用する「面前服用」が義務化されます。(ただし、すでに処方箋なしでの購入の場合は必須)
    ※なお、制度上は「特定要指導医薬品」として扱われるため、通販や郵送販売は認められず、薬局での対面のみでの購入となります。

この方針は「調査研究」として一部薬局で試験的に行われていた販売を、恒久的な制度としてスイッチOTCし、全国で展開していくためのものです。

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4. 従来の試験販売との違い

これまで緊急避妊薬を入手する場合、主に次の2つのルートがありました。

  1. 医療機関の受診(対面またはオンライン診療) → 処方箋に基づき薬局で調剤を受け取る
  2. 厚労省の「調査研究」に参加する薬局で、薬剤師から直接購入する(処方箋不要)

なお、いずれの場合も対応できるのは、厚労省が定めた研修を受けた医師や薬剤師に限られます。特に調査研究対象の薬局はまだ全国で数百店舗程度と限られており、必ずしも「必要な時にすぐ入手できる体制」にはなっていませんでした。

今回は、調査研究参加薬局から受け取る2のケースを元に、いくつかの改案が提示されました。そこで、新方針との主な違いは以下に簡単に示しておきます。

項目従来の調査研究としての試験販売今回の新方針
制度の位置づけ厚労省の調査研究に参加する一部薬局で限定的に実施法律に基づく恒久制度(特定要指導医薬品として市販化)
年齢制限16歳以上のみ購入可年齢制限なし(未成年も購入可)
保護者の同意・同伴16〜17歳は同意・同伴が必要不要
販売方法薬剤師による対面説明・面前服用必須薬剤師による対面説明・面前服用必須(変更なし)
購入できる薬局調査研究に参加した薬局に限られる(数百店舗程度)要件を満たした薬局なら全国的に展開可能

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5. 新方針の意義

今回の方針は「販売方法そのもの」は大きく変わりませんが、年齢制限を撤廃し、恒久制度化することに大きな意味があります。

  • アクセス改善
    → 性被害や性虐待など、保護者に相談できない状況も想定されるため、16歳以上という年齢制限や保護者同伴の条件は不適切とされ、撤廃に合意しました。

  • プライバシーへの配慮
    → 当事者団体からは「薬剤師の面前での服用はプライバシー侵害になり得る」「心理的にためらう要因となる」という意見がありました。
    → ただし厚労省や医療関係者は、安全性の観点から当面は面前服用を維持する方針をとっています。

  • 医療界の必要性の認識
    → 日本産婦人科医会など医療関係者からも「望まない妊娠を防ぐためには市販化が必要」との意見が示され、まずは販売ルールを維持しつつ市販化を進めることで一致しました。

  • 厚労省の狙い
    → 「調査研究」という限定的枠組みから脱却し、恒久的な制度として全国でアクセス可能にすることを目的としています。安全性や使用実績が確認されたため、今回のスイッチOTC化が打ち出されたと考えられます。

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6. 当面の課題と今後の展望

6-1. 服用後のアフターケア

現状では「服用後は医療機関の受診が望ましい」とされていますが、これは義務ではありません。本来の目的は「妊娠を回避すること」であり、服用後に妊娠していないかを確認することが不可欠です。
理想は婦人科を受診して妊娠判定や副作用チェックを行うことですが、時間的・心理的ハードルから受診が難しい方には、まず自宅での妊娠検査薬によるセルフチェックが有効です。

いずれもドラッグストアやAmazonで手軽に購入でき、感度は医療現場で用いられる検査と同等レベルです。まずはセルフチェックで確認し、陽性反応が出た場合や不安が残る場合は、必ず婦人科を受診してください。

6-2. 避妊の確実性

緊急避妊薬は重要な選択肢ですが、あくまで「最後の手段」です。特に、性感染症を防ぐためには、日常的にはコンドームを用いることが重要です。さらに低用量ピル(処方箋必要)などを併用することで、避妊の確実性はより高まります。

実店舗で購入するのは心理的に抵抗を感じる方も少なくありませんが、ネット通販なら気軽に注文でき、プライバシーも守られるのが大きな利点です。

6-3. 薬局での対応体制

面前服用が義務化される一方で、プライバシーをどう守るのか、さらには深夜や休日でもできる限り早く、かつ安心してアクセスできる体制をどう整えるのかが問われています。

さらに、スイッチOTC化が恒久制度として定着すれば、薬剤師に課される責務は一層大きくなります。販売時には適切な説明や安全確認だけでなく、服薬後のフォローや性感染症への注意喚起なども求められるからです。そのため、厚労省が定めた所定の研修を受ける薬剤師を増やし、対応できる薬局を全国的に広げていくことが理想とされます。薬剤師一人ひとりのスキルアップと体制強化が、安心して利用できる環境づくりの鍵となります。

6-4. コスト面

特に若年層にとっては、保険適用のない経口避妊薬の購入に関しては、価格面が大きなハードルな一つになると思われます。現在では、薬代やアフターケアの妊娠検査薬などを含めると1万を超えてしまうこともあります。この点もスイッチOTC化を実現するにあたり、助成制度や価格低減の仕組みを検討する必要があるでしょう。

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