もう悩まない!イボの正体と最適な治療法を徹底解説

皮膚疾患

1. イボの定義

まず、「イボ」とは俗語であり、医療においての正式な名称ではありません。イボの定義としては、「皮膚から盛り上がっている小さなできもの」を指し、そのほとんどは良性腫瘍となります。またこれらは、いくつかの種類に分けられています。

一般的に「イボ」として知られているものは、正式には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」と呼ばれます。これ以外にも、高齢者にできやすい「老人性イボ」と呼ばれる「脂漏性角化症」や、首や脇下によくでき「首イボ」とも言われている「軟性線維腫」などがあります。また、尋常性疣贅と同じヒトパピローマウイルス(HPV)の異なる型によって引き起こされ性器などにできやすい「性器イボ」である「尖圭コンジローマ」も存在します。

これらのイボはそれぞれ原因や伝染性、治療法が異なります。ウイルスが原因で伝染するものもあれば、加齢が原因のものもあります。これから、それぞれのイボについて詳しく説明していきます。

目次に戻る

2.イボと類似症状の相違点

類似したできものとしては、タコやウオノメなどがあり、なかなか区別がつきづらいかもしれません。そこでまず、イボとその他のできものとの大雑把な違いについて説明します。タコやウオノメは、長期間一定の部位に刺激や圧力を受けることによるもので、イボとは異なる原因によって引き起こされるため、見た目や症状に違いがあります。また、イボは表皮と真皮が互いに入り組んだ状態であるのも相違点です。

タコの見た目としては、刺激を受け続けている部位が厚く平らに盛り上がります。また、この盛り上がった硬い層がクッション代わりとなり、外からの刺激から守ってくれるため痛みはほぼ感じません。これがタコと他との最も大きな違いです。

ウオノメは、中央に芯のようなものができ、そこを中心に円形に皮膚が固くなります。刺激を受け続けると、くさび状に食い込んだ角質が神経を圧迫し、歩行などによりひどい痛みを生じることもあります。なお、小さいものであるとイボとの区別が難しくなることがあります。

これらの違いを理解することで、イボとタコ、ウオノメなどをおおまかには区別することができます。

目次に戻る

3.ウイルスの感染経路

ウイルスが原因のイボは、主にヒトからヒトへの直接感染が最も一般的ですが、間接的な接触によっても伝染することがあります。例えば、プールやジム、銭湯などの共有施設では、水虫と類似した傾向が見られます。また、食品業界などで鮮魚や精肉を取り扱う方は、手のウイルス感染を助長させ、イボの発症率が高いことが知られており、職業に関連したウイルス感染もあることが判明しています。

ただし、イボの原因となるウイルスは、基本的には健常な皮膚から感染することはありません。ウイルスは、外傷などによる微細な傷口から皮膚内に侵入し、表皮の一番下にある層に特異的に感染します。そして、ウイルスは潜伏(不顕性)感染状態にあり、しばらくの間は症状が現れません。しかし、ある一定数のウイルスが活性化し、イボとして症状を発症してしまいます。

目次に戻る

4. イボの種類と特徴

まずウイルスによるものかどうかで大別します。そして、ウイルス性のイボは伝染し、そうでないものはしません。

4-1. ウイルス性イボ

(1)尋常性疣贅(一般イボ)
【原因】特定のヒトパピローマウイルス(主にHPV-1、HPV-2、HPV-4など)
【見た目】 表面がザラザラしており、隆起または平坦な突起物
【主な発生部位】手や指、膝や足の裏など
【症状】通常は痛みやかゆみなど自覚症状はない
【伝染性】高い

(2)伝染性軟属腫(水イボ)
【原因】 ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)
【見た目】表面がツルツルで、小さな水膨れ状のもの
【主な発生部位】体や手足、脇や股など(毛に感染することが多いと考えられ、手足の裏などは発症しにくい)
【症状】自覚症状はなし
【伝染性】高い(しっかり患部を覆えば小学校などではプール可)

(3)尖圭コンジローマ(性器イボ)
【原因】特定のヒトパピローマウイルス(主にHPV-6、HPV-11)
【見た目】鶏冠やカリフラワー状の小さなブツブツ
【主な発生部位】性器や肛門周囲、口腔内1など
【症状】性行痛や不正出血、排尿困難など
【伝染性】非常に高い(主に性行為による。患部を完全に覆い尽くさない限り、コンドームでも完全予防は困難)

4-2. 脂漏性角化症(老人性イボ)

【原因】明確には不明(加齢や遺伝的要因とも考えられる)
【見た目】褐色〜黒色で、シミがイボのようにやや盛り上がった状態
【主な発生部位】顔や首、胸や背中など。紫外線が多く当たる部位
【症状】ほぼないが、たまにかゆみや赤み
【伝染性】なし

4-3. 軟性繊維腫(首イボ)

【原因】明確には不明(紫外線や摩擦によるものとも考えられる)
【見た目】淡褐色〜薄茶色で、小さな突起物。巨大化して垂れ下がることもあり
【主な発生部位】首や脇、鼠径部など柔らかい部位
【症状】普段はなく、擦れて炎症を起こすと痛むこともあり
【伝染性】なし

目次に戻る

5.イボの有効な治療法

ウイルス性のイボには特異的な抗ウイルス薬が現時点では存在せず、特定の治療法が優先して推奨されることはありません。医療機関では、患者個々の状態を見ながら最適な治療法を選択し、試行錯誤しながら治療を行っています。そのため、各治療法においても効果には個人差が大きく、保険適用外のものも多いです。以下に、現在使用されている治療法の中から有効であると言われているものを説明します。
記した推奨度は、最新の尋常性疣贅治療ガイドラインを参照しており、推奨度の高い順にA>B>C1>C2となっています。

5-1. 物理的治療法

(1)液体窒素凍結療法:推奨度A
液体窒素を用いてイボを凍結させ、壊死に至らせてカサブタにして除去する治療法です。保険適用があり、現在最も広く活用されています。ただし、個人差が大きく、効果が見られない場合もあります。通常、イボ周囲を含めて3回凍結を繰り返し、1〜2週ごとに行います。手指や四肢のイボには有効ですが、足底には効果が薄いとされています。

(2)電気凝固:推奨度B
電気凝固は、患部に局所麻酔を施し、電気メスで焼灼する治療法で、保険適用があります。ガイドラインでは、標準治療が有効でない場合の選択肢の一つとされています。特に足底のイボに有効とされますが、施術後に瘢痕が残りやすいことが注意点です。

(3)レーザー照射:推奨度B〜C2
レーザー照射は、特定の波長の光を増幅させて除去する治療法で、標準治療が無効であった時に考慮します。レーザーには、CO2レーザー、エルビウムヤグ(Er:YAG)レーザー、PDLレーザーなどがあり、すべて保険適応がありません。また、各種レーザー治療は、その機器や方法などによりかなり有効性に差が出てしまう傾向にあります。

5-2. 化学的治療法

(1)サリチル酸外用(スピール膏、サリチル酸ワセリン軟膏):推奨度A
サリチル酸は、角質を柔らかくする作用に加え、ウイルスに対する免疫を高める作用もあるとされています。医療用や市販薬としてスピール膏があり、保険適用もあります。注意点としては、正常な皮膚に薬がつくと、白くふやけて皮が剥けてしまう恐れがあるため、患部のみに使用するように注意が必要です。また、ウイルス性イボは傷口から侵入して悪化するため、皮剥けが起こるとそこからさらにイボが広がる可能性があります。活性型ビタミンD3外用と併用することで、効果を高めることもできます。

5-3. 薬物的治療法

(1)活性型ビタミンD3外用(マキサカルシトール軟膏):推奨度C1
活性型ビタミンD3外用薬としてはマキサカルシトール軟膏があり、通常は乾癬の治療薬として使用されます。患部が分厚い場合、サリチル酸製剤のスピール膏と密封療法を併用することが推奨されます。やり方は、1日1回入浴後などに、マキサカルシトール軟膏を患部に塗布後、スピール膏で覆いさらにテープ剤などで密封する治療法です。前述通り、薬が正常な皮膚についてキズになると悪化要因になるため、はみ出さないように使用するよう注意が要ります。

(2)ブレオマイシン局所注入療法:推奨度C1
ブレオマイシンは本来抗悪性腫瘍薬ですが、イボの細胞を壊死させるために治療に用いられ、従来の治療法で効果がない難治性の症例に対して試みられます。デメリットとして、色素沈着や瘢痕が残りやすいこと、爪周囲での骨融解があり爪周囲のイボには推奨されないこと、保険が適用されず費用がかかることがあります。また、注射以外でも塗布剤としてブレオS軟膏を使用し、閉鎖密封療法を行う方法もあります。

(3)レチノイド外用(アダパレン)・内服(チガソン):推奨度C1
レチノイドはビタミンAの誘導体で、細胞などの増殖を抑える作用があります。その作用を利用し、イボ表面の角質が厚くなるのを防ぎ、皮膚を正常に改善します。ただし、本剤には催奇形性があるために、妊婦や妊娠の可能性のある方は使用できない治療法です。外用剤では、本来ニキビの薬であるアダパレンを使用し、1日2回の密封療法により凍結療法に近い有効性があったデータもあります。内服薬では、医療用としてチガソンという角化症の治療薬を用います。本剤は多発性イボなどにも効果があるという報告がある一方、副作用が比較的多いのが難点です。具体的には、口内や唇の炎症、皮膚の乾燥や落屑、脱毛および肝障害などが挙げられます。

5-4. 免疫学的治療法

(1)ヨクイニンエキス内服:推奨度B
ヨクイニンは、ハトムギの皮を除いた種子を乾燥させたものです。メカニズムとしては、マクロファージやNK細胞2などの免疫細胞の活性化し、ウイルス感染を排除します。さらに、直接的に抗ウイルス作用を示しHPVの増殖を抑制したり、炎症を抑制する作用で皮膚の治癒が促進されます。ただし、エビデンスでは若年層での有効率が高い一方で、成人ではやや低いとされています。また、ヨクイニンは漢方薬ですが比較的クセのない風味で、さらに錠剤と散剤の両方があり飲みやすい薬となっています。

(2)接触免疫療法:推奨度B
接触免疫療法は、意図的にカブレを起こしてイボを治療する方法です。通常カブレという現象は良くないことですが、SADBEなどの自然に存在しないものをアレルゲンとしているため危険性は低いです。やり方は、アレルゲンとなるDPCPやSADBEを少量塗布し、体にそれを覚えさせます(これを感作と言います)。しばらく日にちを置いた後、再度アレルゲンを使用しカブレを起こすことでT細胞などの免疫細胞が集まり、原因ウイルスを排除することができます。副作用としては、カブレ様症状である赤みやかゆみが伴います。またこの治療法は、白斑や円形脱毛症にも有用されています。

(3)イミキモド外用(ベセルナクリーム):推奨度C1
イミキモドは、抗ウイルス作用を持つインターフェロンαや腫瘍細胞を排除するTNF-αの産生を促進することで、イボの原因であるヒトパピローマウイルスを減少させます。現状では尖圭コンジローマにのみ適応があり、びらんや紅斑などの副作用がかなり出やすいことが特徴です。週に3回夜のみ使用し、起床時には必ずしっかり洗い流さないと、上記の副作用が出やすくなってしまいます。

(4)シメチジン内服:推奨度C1(小児例)
シメチジンはH2ブロッカーと呼ばれる、胃酸の分泌を抑える作用を持つ胃薬の一種です。その他にも細菌やウイルスを排除するヘルパーT1細胞の産生を促す作用や、腫瘍細胞を抑える作用もあるとされています。ただしこの治療法では、16歳以下の小児の治癒例が多かったことと、凍結治療法の方が有効性が高かったことから、小児で痛みをかなりの伴う凍結治療法を拒否する難治性のものに考慮するとされています。

目次に戻る

6. イボの各種類の治療法

6-1. 尋常性疣贅(通常イボ)の治療

大まかな治療手順(アルゴリズム)を記載すると以下の通りになります。ただし、前述通り、その方の症状や体質などにより治療法は大きく異なることがあります。
・角質除去+液体窒素凍結療法
   ↓効果がない場合
・角質除去+液体窒素凍結療法+サリチル酸+ヨクイニン
   ↓効果がない場合
・接触免疫療法+ヨクイニン
・活性型VD3+サリチル酸+ヨクイニン
・電気凝固またはレーザー療法

6-2. 伝染性軟属腫(水イボ)の治療

少数で見た目が問題なかったり、気にならなければ自然治癒で問題ありません。ただし、アトピー性皮膚炎などをもっていると、もともと皮膚が荒れていたり引っかいて皮膚にキズができ、水イボが広がったり伝染性膿痂疹(とびひ)の原因にもなったりします。意見が分かれるところですが、広がらないうち、多くても10個以上になる前に早めに対処するというのが主流のようです。
治療法としては、専用のピンセットでの除去や液体窒素などがありますが、とても痛いらしいです。よって、特に小さいお子様に対しては、治療前に麻酔テープを使用すると治療がスムーズに受けられます。

6-3. 尖圭コンジローマ(性器イボ)の治療

尖圭コンジローマは、かゆみや痛みがないので放置しがちですが、そのままにしておくとどんどん大きくなったり、パートナーへの感染率を高めます。よって、早めの治療が推奨されています。また、原因ウイルスは体内から完全に排除できるわけではないため、再発の可能性はあります。
治療法としては、イミキモド(ベセルナクリーム)による薬物療法、液体窒素凍結療法、電気メスやレーザーによる焼灼などが有効です。

6-4. ウイルス性以外のイボの治療

脂漏性角化症(老人性イボ)や軟性線維腫(首イボ)などのウイルスが原因でないイボであると、市販のイボコロリやスピール膏などのサリチル酸製剤およびヨクイニンなどは効果はありません。自覚症状が少なく伝染もしない、かつ悪性腫瘍でもないため放置しても良いですが、自然治癒せず美的観点から治療を望む方が多くおられます。治療法としては、凍結療法、外科的治療による切除、レーザー療法などがあります。

目次に戻る

7. イボ関連のまとめ

  • イボとは俗語であり、「皮膚から盛り上がっている腫瘍な小さなできもの」の総称のことを言う。
  • イボとタコやウオノメなど似ているできものとの違いは、長期的に圧力や接触が原因でできたか否か、また平たく盛り上がって痛みがないのがタコ、芯のようなものがあり歩いたりして圧力がかかると痛みがあるのがウオノメなどと、大まかに区別をつけることは可能である。
  • イボは主にウイルス性とそれ以外に大別され、ウイルス性以外のイボはうつることはない。ウイルス性イボには、一般的なイボの尋常性疣贅、水イボである伝染性軟属腫、特殊イボの一種で性器などにできやすい尖圭コンジローマなどがある。ウイルス性以外であると、老人性イボと呼ばれる脂漏性角化症、首イボとも呼ばれる軟属線維腫が出やすいイボとされている。
  • ウイルス性イボは、主には直接感染。公衆施設にて床やタオルなどを介し、水虫のように間接感染することもあり。また、ウイルスは健康な皮膚からは伝染せず、小さいながらも傷があるとそこから侵入し、不顕著感染し発症することがある。
  • 尋常性疣贅の現状特定の治療法が優先して推奨されることはなく、個々の体質や状態などをみて判断を行う。
    物理的治療として、現在最も広く活用されている液体窒素で焼く凍結療法、電気メスで焼く電気凝固、各種レーザーを当ててイボを取る方法などがある。
    化学的治療法には、貼り薬であるスピール膏などを用いるサリチル酸外用が最も使用され有効性が高い。
    薬理的治療法としては、スピール膏と併用し密封療法を行うとさらに効力を発揮する活性型ビタミンD3外用、細胞毒性によりイボを排除するブレオマイシン局所注入療法、角化細胞の異常増殖を防ぎかつ免疫系にも働くレチノイド製剤がある。
    免疫学的療法では、ハトムギ由来のヨクイニン、あえて人工物をアレルゲンとしたカブレを起こす接触免疫療法、尖圭コンジローマに適応のあるイミキモド、小児のみ有効性が高い胃酸分泌抑制薬のシメチジンなどさまざまなものがある。
  • 各種イボの治療方針として、尋常性疣贅では、角質除去をしながら、優先の高いものから液体窒素凍結、加えてサリチル酸やヨクイニン、効果がなければ接触免疫療法とヨクイニン併用、活性型ビタミンD3とサリチル酸およびヨクイニンの併用、電気凝固またはレーザー治療などを試していく。
    水イボ(伝染性軟属腫)では、自然治癒させるか早めの除去はかなり意見が分かれるところだが、放置するととびひの原因となったり悪化を防ぐためにも早めの受診が望ましいか。専用ピンセットでの除去が早く、他に液体窒素やヨクイニンなどを使用することもある。性器イボである尖圭コンジローマにはイミキモドの薬物療法、他に凍結療法やレーザーでも治療する。
    ウイルス性以外のイボである、老人性イボ(脂漏性角化症)や首イボ(軟性線維腫)では、凍結療法、外科的切除、レーザーによる治療がある。

目次に戻る

コメント

タイトルとURLをコピーしました