乾燥・敏感肌のあなたに!秋冬を乗り切るための保湿剤ベストガイド

皮膚疾患

1. はじめに

秋から冬にかけて、空気が乾燥してくるとともに、肌の乾燥も気になり始める季節ですね。肌がかさついたり、敏感に感じることが増えていませんか?実は、季節に合わせたスキンケアをしていないと、肌の乾燥や刺激を引き起こしやすくなります。保湿ケアが大事なことは知っていても、意外と正しい方法でできていないことが多いものです。この機会に、秋冬の乾燥・敏感肌対策をしっかり見直してみましょう。

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2. 秋冬の保湿ケアの基本ステップ

乾燥した秋冬の季節には、特に肌の保湿ケアが重要です。この時期は、外気の乾燥や寒さによって肌が敏感になりやすく、保湿効果のあるスキンケアが求められます。ここでは、朝と夜のケアの違いや、洗顔から保湿までの効果的な流れについて解説します。

2-1. 朝と夜のケアの違いとコツ

2-1-1. 朝のスキンケア
朝のスキンケアは、外的要因から肌を守るために重要です。洗顔後、化粧水等でで水分を補給し、その後にクリームや乳液で保護膜を作ることが基本です。この際、保湿成分が含まれた製品を選ぶことで、日中の乾燥から肌を守ることができます。また、秋冬でも紫外線は存在するため、日焼け止めを使用することも忘れずに。紫外線によるダメージは肌のバリア機能を損ない、乾燥を悪化させる原因となるため、保湿と同時にUV対策も行うことが重要です。

2-1-2. 夜のスキンケア
一方、夜は肌が再生される時間ですので、よりリッチな保湿を心がけましょう。クレンジングと洗顔をしっかり行った後、化粧水や美容液で栄養を与え、保湿クリームをたっぷりと使うことがポイントです。また、ナイトクリームやバームなど、より高い保湿効果を持つ製品を選ぶと良いでしょう。これにより、睡眠中に肌がしっかりと水分を保持し、翌朝の肌状態が大きく改善されます。

2-2. 洗顔から保湿までのステップ

スキンケアの最初のステップは洗顔です。肌に負担をかけないよう、優しく洗い流せる洗顔料を選びましょう。洗顔後は、できるだけ早く化粧水を使って肌に水分を補給することが重要です。この時、コットンを使わず手のひらで優しく押し込むように浸透させると、より効果的です。

次に、美容液を使うことで肌に必要な成分を集中補給します。特にヒアルロン酸やセラミドを含む美容液は、保湿力が高く、乾燥肌や敏感肌にぴったりです。最後に、クリームや乳液でフタをし、肌の水分が逃げないようにします。これらのステップをしっかりと行うことで、肌の水分量が保たれ、乾燥や刺激から守ることができます。

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3. 乾燥肌・敏感肌に合った成分の選び方

乾燥肌や敏感肌に合った成分選びは重要です。適切な成分を選ぶことで、肌のバリア機能を強化し、刺激を抑え、秋冬の乾燥した環境から肌を守ることができます。保湿成分は、その働きによって2つの主要なタイプに分けられます。

3-1. ヒューメクタントが主体の成分

ヒューメクタントとは、水分を吸着するなどし、皮膚に水分を与えて潤いを保つ水溶性成分です。医薬品ではヒルドイドがとても有名です。

3-1-1. ヒアルロン酸

ヒアルロン酸はムコ多糖の1種であり、角層表面に薄い皮膜を形成し水分を保持する作用があります。ただし、ヒアルロン酸は非常に分子量が大きいため、通常皮膚への浸透は困難です。よって、化粧品などでは、低分子化したヒアルロン酸、アルキル化など修飾したものが浸透しやすく、乳酸菌発酵液と併用すると効果が増加するともされています。より効果を得たい場合は、成分を確認しこれらが入っているものを選ぶと良いでしょう。

また、ヒアルロン酸は主には真皮に存在し、皮膚にハリや弾力をもたら効果もあると言われています。ただし、化粧水など外からは真皮までは通常届かないために、外用剤としてはその作用に関しては期待しない方が良いと思われます。

3-1-2. ポリオール類(グリセリンなど)
ポリオール類は、保湿剤として多くの化粧品に使用され、皮膚に水分を保持する効果があります。代表的な成分としてグリセリンやジプロピレングリコール(DPG)が挙げられます。これらの成分は、アクアポリン3と呼ばれる水分輸送タンパク質を通じて皮膚に水分を供給し、保湿作用を発揮します。

グリセリンとDPGの特徴として、角質への浸透性はDPGが優れているものの、保湿持続効果はグリセリンの方が長いとされています。このため、使用目的に応じて選択されることが多いです。

一部では「グリセリンがアクネ菌を増やし、ニキビを悪化させる」といった情報も見られますが、エビデンスは限られているのが現状です。高濃度や過剰な使用が毛穴に残る場合はリスクが考えられますが、適量の使用や適切な洗顔を行えば、ニキビの悪化にはつながりにくいと考えられます。ただし、個々の肌質により異なるため、使用して不快感や肌トラブルを感じた場合は、グリセリンフリーの製品を選ぶことも良い選択です。

3-2. エモリエントが主体の成分

エモリエントとは、皮膚の表面を覆いフタをすることで、水分を閉じ込める油脂性成分です。市販でもよく見かける、白色ワセリンなどが典型的な保湿剤です。

3-2-1 セラミド

セラミドは、皮膚の保湿やバリア機能の維持において非常に重要であるだけでなく、生理活性脂質として細胞調節に寄与し、自然免疫系の形成にも関与しています。

①皮膚のバリア機能強化
皮膚の水分保持は、「ラメラ構造」と呼ばれる、水と油が交互に重なる層の維持に依存しています。セラミドが不足すると、このラメラ構造が崩れ、皮膚バリアが弱まり、乾燥や外部刺激に対する保護力が低下します。そのため、適量のセラミドは、皮膚のバリア機能を支え、水分保持を促進する役割を持ちます。

②脂質メディエーターとしての役割
紫外線や酸化ストレスなどの外部刺激を受けた際に、セラミドの産生が促進され、アポトーシス1を誘導したり、抗菌物質を産生して自然免疫を活性化する作用を果たします。

注意点としては、セラミドは皮膚がすでに荒れてしまった状態では、単体では効果が得られづらいこと。よって、炎症を抑える成分などと併用することが望まれます。

3-2-2. 油剤(ワセリンなど)

油剤は角層の上にバリアとして油膜を形成し、水分の蒸発を防ぎます。代表的な成分には、石油系の流動パラフィンやワセリン、肝油由来のスクワラン、そして天然のラノリンやミツロウなどがあります。この中でも、ワセリンは高い保湿・バリア機能を持ち、肌への刺激が少ないため、多くのスキンケア製品や医薬品に使用されています。特に、白色ワセリンは精製度が高く、不純物が少ないため、敏感肌や乾燥肌のケアには効果的です。

ただし、油剤が他の成分と混ざると保護効果が低下することがあるため、単体での使用が推奨される場面もあります。特に、純粋なエモリエントとして使用する際は、白色ワセリン単体を選ぶことが理想的です。これにより、角層のバリアをしっかりと維持し、長時間の保湿効果を得ることができます。

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4. おすすめの保湿剤

4-1. ヘパリン類似物質

ヘパリン類似物質は、血液を固まりにくくする作用のあるヘパリンと似た構造を持ち、高い保水力と皮膚の浸透力を持っています。よって、保湿剤の中でも保湿作用はとても高いとされています。

(1)ローション剤

ローション剤は使用感がとても良く、広範囲に伸ばして使いやすく時間がないときであってもすばやく塗ることができるのが特徴です。1年を通しての使用に適しています。

さらに、ローション剤は乳液タイプと化粧水タイプの2種類に分けられます。両者は文字通り見た目や使用感がかなり異なります。病院で処方された薬を薬局でもらう際は、(医師の特定の指示がなければ)本来はどちらか選択できます。何も伝えない限り薬局にあるものが調剤されるため、薬剤師に〇〇タイプの方が欲しいと伝えましょう。

(2) クリーム剤

クリームタイプは伸びが程よく、適度な硬さ・質感で使用感があります。よって、特に乾燥を防ぎたい秋から冬にかけてがお勧めです。また、ハンドクリーム用にも用いられます。

クリーム剤は基剤の違いで、主体が油分か水分かで種類に分かれ、各々使い勝手も少し異なります。

a. 油型(油中水型, w/o型)

ベースが油であるため、手洗いに強く皮膚の保護作用も高いものになっています。よって、水仕事で頻回に手洗いする方などに適しています。医療用医薬品としては、ヒルドイドソフト軟膏(後発品ではヘパリン類似物質油性クリーム)がこれに当たります。

b. 水型(水中油型, o/w型)
ベースが水であるため、伸びが良く塗り心地重視の方にはおすすめです。医療用医薬品ではヒルドイドクリーム(後発品ではヘパリン類似物質クリーム)があります。

(3) フォーム剤

フォーム剤は薬が泡状になって出てくるため、ローション剤のように伸びが良くかつ形を持って留まるため、使い勝手もかなり良いと思われます。

医療用医薬品としては、ヒルフォイドフォームやその後発品のヘパリン類似物質外用泡用スプレーがあります。市販薬でもすでに、ヒルマイド泡フォームなどのフォーム剤が販売されている様です。

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4-2. 尿素剤

尿素は、皮膚の天然保湿因子(NMF)の重要な成分で、水分を引き寄せるヒューメクタントとしての作用により、角質層の水分保持を促進し乾燥を防ぎます。また、高濃度では角質軟化・角質除去作用を示すことが知られています。

具体的には、ウレパール、ケラチナミン、パスタロン(またはそのまま尿素)などの名称で処方、または市販で販売されています。後ろにつく数字は濃度を表します。

医療用および市販の尿素剤には一般的に10%および20%の濃度があり、使用目的に応じて選択する必要があります。

① 20%(高濃度)の尿素剤が適しているケース
高濃度尿素剤は、角質軟化作用を持ち、硬くなった皮膚を柔らかくすることで、乾燥を和らげます。特にひどい手荒れやかかと、肘のように角質が肥厚している部位に効果的です。ただし、高濃度の尿素は角質剥離の作用が強いため、炎症を伴う皮膚やデリケートな部位には使用を控えるべきです。

② 10%(低濃度)の尿素剤が適しているケース
低濃度尿素剤は、乾燥し鮫肌のように荒れた肌に適しており、低刺激で皮膚が薄い部位にも比較的安全に使用できます。角質を保湿し柔らかくする一方で、角質の剥離効果は控えめです。

使用上の注意点として、尿素剤は角質を柔らかくしターンオーバーを促進しますが、高濃度を長期間使用し続けると、角質が過剰に剥がれ、バリア機能の低下や乾燥肌を引き起こす可能性があります。特に高濃度の使用後は、他の保湿成分を含む保湿剤でバリア機能を補い、肌を保護することが推奨されます。

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5. 日常生活でできる乾燥対策

5-1. . 室内の湿度

乾燥肌や敏感肌の悪化を防ぐためには、室内の湿度を一定に保つことが重要です。湿度が40〜60%程度になるように加湿器などを使い、空気が乾燥しすぎないよう心がけましょう。暖房を使用する季節は湿度が低下しやすいため、加湿器を併用することをおすすめします。適切な湿度が保たれることで、肌の水分が蒸発するのを防ぎ、乾燥を軽減できます。

5-2. シャワー・入浴

タオルで強く洗ったり、熱いシャワーや長時間の入浴は、肌の天然保湿因子(NMF)や皮脂を洗い流し、肌が乾燥しやすくなる原因となります。ボディソープをよく泡立て優しく手などで洗い、ぬるめ(37~40℃程度)の湯温で短めの入浴を心がけ、洗浄力が強すぎない低刺激のボディソープや洗顔料を使うと、肌の水分保持に役立ちます。また、入浴後はすぐに保湿剤を塗ることで、肌の乾燥を防ぎやすくなります。また、どうしても長時間入浴をしたい、寒い冬場や入浴が好きな方は、なるべくヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分入りの入浴剤を併用しましょう。

5-3. バランスのとれた栄養摂取

乾燥肌や敏感肌を改善するためには、バランスのとれた栄養摂取も重要です。ビタミンA、ビタミンE、オメガ3脂肪酸などは、肌の健康を保つために有用とされています。ビタミンAは肌の新陳代謝を助け、ビタミンEは抗酸化作用で肌のダメージを抑える働きがあります。また、オメガ3脂肪酸(魚やナッツ類に多く含まれる)は、肌の炎症を抑え、バリア機能をサポートする作用があるとされています。

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6. 保湿に関するQ & A

Q1. 保湿は1日に何回もやった方が効果的なのですか?

A1. 1日1回よりも2〜3回保湿を行った方が、皮膚の水分保持量が高まることが示されています。特に乾燥が強くなる秋冬の時期には、こまめな保湿が乾燥を防ぐのに役立ちます。ただし、最低でも1回の保湿を行うことが大切で、肌の状態に応じて適切な頻度を保つことが推奨されます。

Q2. 保湿剤は種類がありますが、どれを先に塗っても構いませんか?

A2. 理想的な保湿効果を得るためには、ヒューメクタントとエモリエントの塗布順序が重要です。ヒューメクタント(ヘパリン類似物質など)は角層に水分を引き寄せる役割を果たしますが、その後にエモリエント(ワセリンなど)を使用することで、引き寄せた水分を封じ込め、皮膚の水分蒸発を防ぐことができます。この塗布順は、保湿効果を最大化するために有効とされています。

加えて、一部の製品はヒューメクタントとエモリエントの両方を含んでいるため、一つのステップで保湿効果を発揮します。保湿剤を選ぶ際は、製品に含まれる成分を確認し、自分の肌タイプやニーズに合ったものを選ぶことが重要です。

Q3. ステロイド剤などの他の薬と一緒に塗るときは、どうすればいいのですか?

A3. これに関しては、皮膚科医によって意見が分かれるところです。ステロイド剤などはピンポイント、保湿剤は広範囲に塗布するものです。ステロイド剤を塗った上から保湿をすると、必要のないところにまでステロイド剤が広がる恐れがあります。よって、一般的には、広範囲に塗る方を下地(保湿など)としその上に塗りたい場所を限定したいもの(ステロイド剤)を塗ります。ただし、逆でも絶対に誤りというわけではありません。

Q4. 保湿剤に他の薬を重ねると、吸収が落ちて効果が落ちたりはしないですか?

A4. 皮膚に薬が吸収されるメカニズムは、主に皮膚の角質層を通過することであり、保湿剤がその過程に大きな影響を与えるわけではありません。そのため基本的に、保湿剤と薬を重ねて塗っても、吸収率に大きな影響はないとされています。よって、ステロイド剤などを保湿剤の上に塗った場合でも、薬の吸収が大きく低下することはほとんどありません。

ただし、皮膚科医によっては保護の観点からワセリンなどを上から重ね塗る方法を取る場合もあったり、状態や状況によることもあるため、その際は専門医の指示に従うのが無難です。

Q5. 保湿は入浴後すぐにした方がいいと言われますが、よく忘れてしまいます。どうしたら良いですか?

A5. これまで「入浴後すぐに保湿を行うべき」とされてきましたが、近年の研究では、必ずしも入浴後に行う必要はないことが示されています。実際、入浴後すぐに保湿をしない場合でも、保湿剤をしっかり使用することで皮膚の水分保持量に大きな差は生じないことが分かっています。重要なのは、保湿剤を適切に使用し、一定の頻度で行うことです。タイミングよりも、定期的に保湿をすることが皮膚の健康を保つために大切です。

※あくまで私の場合はですが、この意見を10年前ほどに聞いて試したところ、明らかに入浴直後に塗ったときの方が乾燥を防げていました(機器で測定したわけでなくあくまで実感として)。一般論としては上記が正しいのですが、人によっては、大きく変わる場合があるかもしれません。

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