アトピー治療の新外用薬「ブイタマークリーム」。既存薬とは〇〇が大きく違う!?

皮膚疾患

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1. はじめに

アトピー性皮膚炎の患者数は以前から年々増加しており、その薬も近年注射剤を始めとして次々と発売されて、中にはとても効果が高いものもあります。

そこでさらに、非ステロイド外用薬として2024年10月にブイタマー(タピナロフ)という塗り薬が新発売されることとなりました。全く新しい作用機序の外用薬として注目を集めています。

2. ブイタマークリームの詳細

ブイタマークリームは、従来のステロイドとは異なるアトピー性皮膚炎の外用薬として、主にプロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏の3種類と比較されます。これらの薬剤とは異なるいくつかの特徴を持っています。

2-1. 効能効果・メカニズム

2-1-1. 効能効果
ブイタマークリームは、アトピー性皮膚炎に加え、尋常性乾癬にも適応が認められています。これにより、広範な皮膚疾患に対して治療効果が期待されます。他3剤が主にアトピー性皮膚炎に特化しているのに対し、ブイタマークリームは他の皮膚疾患に対する治療選択肢を提供する点での利点があります。

2-1-2. 作用機序
ブイタマークリームは、従来の非ステロイド系外用薬とは異なり、新しい作用機序を持った外用治療薬です。主要な作用機序として、AhR(芳香族炭化水素受容体)を活性化させることにより、皮膚での炎症性サイトカインやケモカインの生成を抑制し、炎症反応の軽減を図ります。このAhRの活性化によって、アトピー性皮膚炎などで見られる炎症を直接的に軽減する効果が期待されています。

また、Nrf2(核因子エリスロイド由来2様因子)も活性化することで、酸化ストレスを中心に働きがあり、肌の酸化ダメージから保護する効果が得られます。ストレスの抑制は、皮膚の修復や健康維持が重要です。

さらに、ブイタマークリームはフィラグリン(天然保湿因子)などの皮膚保護成分の産生を促進し、皮膚の保護バリア機能を強化することで、乾燥や外部からの刺激に対する皮膚耐性を向上させます。

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2-2. 用法用量

ブイタマークリームは1日1回の塗布で使用します。この使用方法は大きなメリットであり、入浴後に1回塗布するだけで済むため、塗り忘れが非常に減ると考えられます。一方、1日1~2回であるプロトピック軟膏は、使用開始初期は1日2回の塗布が推奨されており、使用から4週間後に改善が見られた際に1日1回に減量することが可能とされています。

また使用年齢に関しては、新薬でありまだ乳児などへの安全性が確立されていないため、12歳以上となっています。

薬品名ブイタマープロトピックコレクチムモイゼルト
成分名タピナロフタクロリムスデルゴシチニブジフェミラスト
用法1日1回1日1〜2回1日2回1日2回
使用上限なし1回5gまで1回5gまでなし
年齢12歳〜12歳〜生後6ヶ月〜生後3ヶ月〜

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2-3. 剤型

その名の通りクリームタイプの外用剤です。これに対し、プロトピック軟膏やコレクチム軟膏、モイゼルト軟膏は全て軟膏剤であり、使用時にベタつき、顔に塗った際のテカりが気になることがあります。しかし、ブイタマークリームはそのベタつきをかなり軽減できるとされています。

実際の使用感については、私自身も処方を受けて試す予定ですので、使用後にその感想をお伝えしたいと思っています。これにより、読者の皆さんにもより具体的な情報を提供できると思います。

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2-4. 効力

臨床試験では、ブイタマークリームを12週間使用した後、症状がほぼ消失もしくは消失した状態、かつ医師による皮膚の状態評価(IGA)が2段階以上改善した方の割合は20%強でした。

また、臨床試験においては、使用期間が8週程度から効果が現れ始め、16週までの期間においては使用期間に比例して効果が増加する傾向があります。16週以降は効果の上昇が緩やかになり、基本的には長期使用によって効果が減少することはないとされています。逆に言うと、8週間使用しても効果が現れない場合は、効果不十分とみなし中止すること、とされています。

ブイタマークリームはステロイド剤ではないため、効力の強さを詳細に記載することはできませんが、他の非ステロイド外用薬と同等の効果を示すと考えられます。おそらく、ステロイドの強さランクでは「mild〜strong」の範疇にあり、5段階中2〜3番目程度の位置にあると想定されます。

既存の非ステロイド外用薬の効果に関しては、様々な皮膚科医のブログを参考にすると、次のような比較が一般的です。

 ステロイドstrongクラス>プロトピック軟膏>コレクチム軟膏≒モイゼルト軟膏>ステロイドmildクラス

私自身もこれらの薬剤を数ヶ月以上使用した経験がありますが、ほぼ同様の感想を抱いています。このような情報は、患者にとっても重要な参考になるでしょう。

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2-5. 副作用

安全性試験では使用を中止するような、重篤な副作用は見られませんでした。ただし、他の非ステロイド外用薬に比べてやや特徴的な副作用が多いとされています。以下に、主な副作用とその頻度を示します。

  • 外用薬塗布部位の毛包炎:17.0%
    毛包炎とは、毛根を包んでいる毛包に炎症が生じる皮膚疾患です。主に毛穴付近の傷から、ブドウ球菌などの細菌が侵入することによって発生します。見た目は赤いブツブツ状でにきびと類似しています。
    ※製薬会社資料によると、ブイタマーによる毛包炎は細菌が原因で起こるわけではなく、毛包閉塞など別の要因が影響すると考察されているようです。
  • 接触性皮膚炎(かぶれ):8.9%
  • 外用薬塗布部位のざ瘡(にきび):7.6%
  • 頭痛:7.5%
  • アトピー性皮膚炎:3.2%

プロトピック軟膏などの他の非ステロイド外用薬も免疫系を抑制するため、毛包炎やざ瘡が発生する可能性がありますが、その発生率は通常2〜4%程度であり、ブイタマークリームはかなり高い割合でこれらの副作用が出現することが示されています。

頭痛と(そもそもアトピー治療してアトピーの副作用はおかしな話ですが)アトピー性皮膚炎については、具体的なメカニズムはまだ解明されていません。メーカーに確認したところ、それらの原因については不明との回答を得ました。ブイタマーの作用メカニズムから考慮しても、確かになぜ起こるかは想定がつきません。

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2-6. 特定の背景を有する方の注意事項

2-6-1. 皮膚感染症が発症した方
ブイタマークリームは炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)を抑える薬です。炎症性サイトカインは、炎症反応を促進し、細菌やウイルスを排除する役割を果たしますが、ブイタマーはこれらのサイトカインを抑制することで、皮膚感染症を悪化させる可能性があります。そのため、皮膚感染症が発症した場合は、基本的にブイタマーの使用を中止します。医師の指示のもと、抗菌剤や抗真菌剤、あるいは抗ウイルス剤に切り替えたり、併用したりすることが必要となります。

2-6-2. 妊娠
添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用」と記載されています。この文言は多くの医薬品に共通して見られるものです。ただし、臨床試験で使用された量の11倍で影響が出たことから、1回15g(1本分)以上の使用が必要であると考えられます。このため、医師の指示のもとに適切な使用を行えば、リスクは比較的低いと考えられます。

2-6-3. 授乳婦
本剤の使用により、動物実験(ラットの皮下注)で授乳への移行が報告されています。よって、使用には医師との相談が必要となります。

2-6-4. 小児
12歳未満の小児に対して、有効性や安全性の試験が行われていないために、現状では使用することはできません。

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3. まとめ

以上、アトピー性皮膚炎の新外用薬であるブイタマークリームについて取り上げてきました。

既存の非ステロイド治療薬と大きく異なる特徴を以下のようにまとめることができます。

  • 1日1回の塗布で効果が認められていること
  • アトピーの他に、尋常性乾癬にも適応があること
  • クリーム剤であるため、ベタつきが抑えられること
  • 毛包炎やにきび、かぶれの副作用の発生率が比較的高いこと

以上の特徴から、上3つはメリット、下1つはデメリットと考えられます。

まだ発売されて間もないため、効果や副作用に関しては未知数の部分が多いですが、私自身もアトピーを抱えているため、かかりつけ医に処方してもらう予定です。ハーフテスト(顔などの左右に別の外用薬と比較するテスト)を実施し、今までの薬との明らかな違いや効果を確認し、近日中に結果を報告したいと思っています。

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