2026年調剤報酬改定|地域支援体制加算の再定義と薬局に求められる役割

その他

1. 「地域支援体制加算」の概要

1-1. 地域支援体制加算の意義

地域支援体制加算は、調剤基本料に付随する加算として創設され、
薬局が地域医療の中で果たす役割を体制面から評価することを目的として設けられた制度です。

この加算が評価してきたのは、
単に処方箋を受け付け、調剤を行う場としての薬局ではありません。
夜間・休日対応、在宅医療への関与、多職種連携、住民からの相談対応など、
地域で継続的に医療を支えるための基盤を備えているかどうかが問われてきました。

言い換えれば、地域支援体制加算は
「かかりつけ薬局機能」を制度として具体化・可視化するための評価であり、
薬局を単発の調剤拠点ではなく、地域医療の継続性を支える存在
として位置づける役割を担ってきた加算といえます。

1-2. 地域支援体制加算届出の現状

公表資料によると、
令和6年度時点で地域支援体制加算を算定している薬局は、全体の約38%にとどまっています。

制度開始から一定期間が経過しているものの、
令和4年度の区分再編以降、届出率は大きな伸びを示しておらず、
地域支援体制加算が求める体制整備が、すべての薬局にとって容易ではないことがうかがえます。

特に、基本料区分や地域特性によって届出状況には差があり、
患者数や実績要件の影響を受けやすい地域では、
上位区分の算定が進みにくい傾向が確認されています。

この状況は、地域支援体制加算が全国一律の基準で設計されている一方で、
地域の医療資源や患者構成によって、達成難易度に差が生じている可能性を示しています。

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2. 「地域支援体制加算」の名称変更とその意義

今回の改定では、従来の「地域支援体制加算(以下、旧・地域支援加算)」が廃止され、
新たに「地域支援・医薬品供給対応体制加算(以下、新・地域支援加算)」が創設されます。

この名称変更は、単なる表現の刷新ではありません。
中医協第644回資料では、薬局に求められる役割として
医薬品の安定供給および地域における医薬品供給拠点としての機能が、明確に打ち出されています。

従来の旧・地域支援加算は、
地域で活動できる体制そのものを評価する仕組みでした。
これに対し、新・地域支援加算では、
その前提として「医薬品を安定的に供給し続けられる体制を備えているか」という視点が、評価の軸として明確に据えられています。

つまり今回の名称変更は、
地域支援という考え方を弱めたものではなく、
薬局を地域医療における“医薬品供給インフラ”として再定義した結果と捉えるのが適切でしょう。

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3. 区分変更 ― 評価の再編ではなく、役割の整理

今回の改定では、新・地域支援加算の評価区分が、従来の4区分から5区分へと再編されました。
ただし、この変更は評価を細分化したというよりも、
薬局に求められる役割を制度上あらためて整理し直したものと捉えるのが適切です。

背景には、後発医薬品の使用が一定程度定着する一方で、
近年は供給不安が顕在化し、薬局には代替薬の選定や在庫調整など、
医薬品供給を支える対応力がこれまで以上に求められていることがあります。

こうした状況を踏まえ、従来の「後発医薬品調剤体制加算」は役割を整理され、
医薬品の安定供給に資する体制そのものが、
新・地域支援加算の“前提条件”として位置づけ直されました。

その上で、旧・地域支援加算1〜4で評価されてきた体制は、
新2〜5として段階的に再配置されています。

具体的な対応関係を整理すると、以下のようになります。

区分体制設備評価の考え方役割の整理
新・地域支援加算1個別区分要件なし①医薬品の安定供給体制かつ
後発医薬品の一定割合以上の調剤
後発医薬品調剤体制加算に相当
新・地域支援加算2調剤基本料1または
特別調剤基本料B以外
①+地域医療への基本的な貢献旧・地域支援加算1に相当
新・地域支援加算3調剤基本料1①+地域医療への高度な貢献旧・地域支援加算2に相当
新・地域支援加算4調剤基本料1または
特別調剤基本料B以外
①+地域医療への基本的な貢献旧・地域支援加算3に相当
新・地域支援加算5調剤基本料1①+地域医療への高度な貢献旧・地域支援加算4に相当

表が示すように、

  • 新1は「供給体制の前提条件」
  • 新2〜5は「地域医療への貢献度に応じた段階的評価」

という構造が明確に切り分けられています。

つまり今回の再編は、
「前提となる供給体制」と「評価される地域支援体制」を制度上明確に区別した点にこそ意義があります。

薬局を“医薬品供給を支える地域インフラ”として位置づける流れを、
制度としてより明確に可視化した変更といえるでしょう。

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4. 施設基準に関する事項

新たな地域支援加算の算定にあたっては、提示資料で10項目の施設基準が示されています。
ここではまず、その各項目が何を求めているのか、
そして薬局としてどのように向き合うべきかを整理します。

なお、前提となる(1)〜(10)の施設基準については、
中医協・第644回総会資料(P772〜773)をご参照ください。

(1) 医薬品の安定供給に向けた計画的な調達・在庫管理を行うこと

この要件は、新・地域支援加算の根幹を成す考え方といえます。
医薬品在庫の確保は薬局にとって資金負担を伴うものの、
その負担を避けるために卸の急配や他薬局からの分譲に過度に依存する体制は、
地域全体の医薬品供給という視点からは望ましい姿ではありません。

地域の調剤を滞りなく継続するためには、
平時から一定の余裕を持った在庫管理を行うことが不可欠である
──この点を明確に示した要件と理解できます。
「必要なときに必要な薬が確実に手元にある状態」を日常的に維持することこそが、
地域支援の第一歩であるというメッセージが込められています。

(2) 他薬局への医薬品分譲の実績があること

※同一グループ内の分譲は実績に含まれない

この項目は、医薬品の分譲回数や数量を競わせるためのものではありません。
むしろ、供給不安や急な不足が生じた際に、薬局同士が互いに医薬品を融通し合える関係性が、日常的に築かれているかどうか
──その“地域の実態”を確認するための要件と理解するのが適切です。

形式的に分譲実績を作ることは技術的には可能ですが、
本項が評価したいのはそのような表面的な行為ではありません。
求められているのは、地域の医薬品供給を支え合うネットワークが実際に機能しているかどうかという点です。

薬局間の協力体制は、平時には目立たないものの、
供給不安時には地域の医療を支える重要なインフラになります。
この要件は、その協力関係が“名目上”ではなく“実際に動いている”ことを示す証拠として、
分譲実績を求めているといえるでしょう。

(3) 供給不安時における在庫不足への適切な対応

医薬品の供給不安が慢性化する中で、
本項は「在庫が確保できない場合に薬局がどのように対応すべきか」
を制度上あらためて明確にしたものです。

従来、処方箋を受け付けた薬局は、
在庫がないことを理由に調剤を断ることはできず、
急配や他薬局からの購入などで対応することが原則とされてきました。

しかし実際の現場では、

  • 患者の意向を踏まえて他薬局の在庫を確認し案内する
  • 処方医に連絡し、供給状況を踏まえて処方内容の調整を相談する

といった柔軟な対応がすでに行われてきたのも事実です。

今回の要件は、こうした現場の実践を
医薬品供給不安という現実に即した「正式な手順」として制度的に位置づけた
ものと理解できます。
つまり、薬局が独自の判断で行ってきた対応を、国として明文化し、
患者が必要な薬を確実に受け取れるようにするための“標準ルール”として整理した項目といえるでしょう。

(4) 重要供給確保医薬品の1か月分程度の備蓄

※備蓄とは薬局が実際に在庫を保有している状態を指す

(4)では、安定確保医薬品の中でも、
生命維持や治療継続に直結するものを「重要供給確保医薬品」と位置づけ、
薬局が自ら一定量を備蓄することを求めています。

ここでいう備蓄とは、卸の在庫や迅速な配送体制に頼ることではなく、
薬局が現に手元に在庫を持っている状態を指します。
つまり、「必要なときに確実に患者へ提供できるだけの量を、
薬局自身が責任を持って確保しておくこと」が求められているわけです。

医薬品供給不安が慢性化する中で、卸と薬局の役割分担を改めて整理し、
薬局にも供給責任の一端を明確に担ってもらう
──本項はその考え方を制度として示したものといえるでしょう。

(5)〜(7) 卸との取引・流通に関する薬局側の責務

―― 流通改善ガイドラインを薬局の“行動規範”として明示した項目

(5)〜(7)は、医療用医薬品の流通改善ガイドラインで示されてきた基本原則を、
薬局の日常業務に落とし込んだ「具体的な行動規範」として整理したものと位置づけられます。

これらの項目は、

  • 価格交渉の姿勢
  • 在庫の持ち方
  • 配送依頼のあり方
  • 返品への向き合い方

といった、卸売販売業者との取引全般において薬局が果たすべき責任を明確に示しています。

総価取引や過度な値引き要求、頻回配送・急配への依存、
さらには棚卸前や薬価改定前を目的とした返品――。
こうした行為は、流通全体に不必要な負荷をかけ、
安定供給を阻害する要因として、これまでも繰り返し問題視されてきました。

特に返品については、法的に当然認められた権利ではなく、
卸売販売業者の協力によって成り立っている側面が大きいという現実があります。
厳格な温度管理が必要な品目や、在庫調整目的の返品が流通に与える影響は小さくありません。

今回の改定は、こうした流通構造の脆弱性を薬局側も正しく理解した上で、
医薬品供給の一端を担う主体として、流通の持続性を意識した行動を取ること
を求めたものといえます。

薬局が適正な取引と在庫管理を徹底することは、単なる“協力”ではなく、
医薬品の安定供給を守るための不可欠な役割として位置づけられています。

(8) 地域での医薬品使用の最適化に関する考え方

(8)は、特定の医薬品を一律に指定・制限するものではありませんが、
地域全体で医薬品の使い方を整理・最適化していくという点では、
地域フォーミュラリと通じる考え方と捉えることができます。

医薬品の安定供給が課題となる中で、
どの薬を、どの程度、どのように使うかを地域単位で共有・調整していく仕組みは、
今後の制度運営において重要性が高まると考えられます。

本項目は、こうした方向性を施設基準の中にさりげなく組み込んだものであり、
厚生労働省としても将来的な展開を見据えた布石と見ることができるでしょう。

(9)・(10)後発医薬品の使用促進に関する実績と姿勢の明示

(9)と(10)は、薬局が後発医薬品の使用促進にどの程度取り組んでいるかを、
実績(一定割合以上の調剤)と、患者への明確な情報提供(掲示)
の両面で示すことを求めた項目です。

求められている内容は、
これまで広く算定されてきた後発医薬品調剤体制加算の要件とほぼ同様であり、
今回の施設基準においても、その考え方を踏襲したものと理解できます。

したがって、特段の新しい対応が求められるわけではなく、
後発医薬品の使用実績を一定水準以上維持し、その取り組みを患者に分かりやすく示すという、
従来からの基本的な姿勢を継続すれば十分といえるでしょう。

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5. 体制要件

5-1. 調剤室の面積

地域における医薬品供給拠点としての役割を果たすためには、
薬局が一定の物理的基盤を備えていることが前提となります。

新・地域体制加算では、
従来の1,200品目以上の医薬品備蓄に加え、
バイオ後続品に対応する保冷設備
在宅医療を支える無菌調製設備(クリーンベンチ等)
の設置が想定されています。
これらを現実的に配置・運用するためには、
従来の基準を上回る調剤室の広さが必要になります。

今回の見直しでは、
令和8年6月以降に新規開設される薬局(改築・増築を含む)について、
調剤室を16㎡以上とすることが求められる方針
が示されました。
(なお、承継・M&Aによる開設は対象外となる可能性が高いと考えられます)

この基準は、単に設備を「置けるかどうか」ではなく、
地域の医薬品供給拠点として必要な機能を安定的に発揮できるか
という観点を重視したものといえます。

今後は、調剤室の広さそのものが、
薬局が地域で果たすべき役割を十分に担えるかどうかを判断するうえで、
実質的な必須条件として位置づけられていくと考えられます。

5-2. セルフメディケーション関連機器の設置

地域における薬局・薬剤師には、
医療・介護関係者との連携による外来・在宅医療の提供に加え、
医薬品の適正使用を通じた公衆衛生の向上、
さらにはセルフケア・セルフメディケーションの推進を通じて、
地域住民の健康維持・増進を支える役割が求められています。

こうした役割を具体的に支える手段の一つが、
セルフメディケーション関連機器の設置です。
現在も主には血圧計、他にパルスオキシメーターや体重計などを設置する薬局は見られるものの、
薬局間で取り組みにばらつきがあり、十分に普及しているとは言えない状況です。

今後は、単に処方箋を応需する場にとどまらず、
地域住民が日常的に自身の健康状態を確認し、
必要に応じて薬剤師に相談できる環境を整えることが、
薬局の基本的機能としてより明確に位置づけられていくと考えられます。

5-3. 薬事未承認の研究用試薬・検査サービスの取扱い

コロナ禍において、一部の薬局で薬事未承認の研究用試薬が、
違法に販売された事例が確認されたことを踏まえ、
薬局が薬事未承認の研究用試薬や検査サービスを販売・提供しないことが、改めて明確に求められています。

研究用試薬や検査キットの中には、
一般消費者向けに流通しているものもありますが、
これらは医薬品や体外診断用医薬品としての承認を受けておらず、
薬局が取り扱うことで医療行為や診断と誤認されるおそれが指摘されています。

そのため、地域の医薬品供給拠点としての信頼性を確保するうえでも、
薬局には 取り扱い可能な製品・サービスの線引きを明確にし、
適切な運営を徹底すること
が求められています。

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6. 実績要件

実績要件については、現時点で詳細な算定基準や件数が示されているわけではありません。
中医協第644回資料で明確に示されているのは、次の3点に整理されます。

  • 調剤時の薬剤一元管理に基づく実績
     疑義照会や残薬調整に係る評価項目を一定程度算定していること
  • 継続的な服薬支援の実施
     かかりつけ薬剤師指導料の廃止に伴い、
     その役割を引き継ぐ服薬管理指導料1(イ)を一定程度算定していること
  • 服用薬剤調整支援料の扱い
     評価体系の見直しにより、実績要件の対象項目から削除されたこと

これらが、資料上で明示されている実績要件の範囲です。

従来の実績要件(10項目)に関しては、 求められる実務の本質は大きく変わらないと想定されます。
今回の記載は、制度改編に伴い、
かかりつけ薬剤師関連の項目や服用薬剤調整支援料といった
制度上の位置づけが変わった項目を整理し直したものと理解するのが適切です。

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7. まとめ

今回の地域支援体制加算の見直しは、
単なる名称変更や点数調整にとどまるものではありません。

中医協第644回資料全体から読み取れるのは、
「地域で医薬品を安定的に供給できる薬局を明確に評価し、そうでない薬局との差を可視化する」
という、厚生労働省の明確なメッセージです。

これまで地域支援体制加算は、 “取れれば評価される加算”という側面がありました。
しかし今回の改定では、

  • 医薬品の安定供給を前提条件とし、
  • その上で地域医療への関与度を段階的に評価する

という構造が明確に示されています。

言い換えれば、
地域支援・医薬品供給対応体制加算は、
今後“あると望ましい加算”ではなく、
薬局が地域で生き残るための最低ラインへと位置づけが変わりつつあると考えられます。

これは、個々の薬局に努力目標を課すというより、 薬局という存在そのものに対して、

「地域において、医薬品供給を担う主体として本当に機能しているのか」

という問いを制度として突きつけたものです。

今後、この加算を算定できない薬局は、
単に「評価されない」のではなく、
“役割を果たしていない”と見なされる局面が増える可能性も否定できません。

厳しいように聞こえますが、
これは薬剤師の価値を下げるメッセージではありません。
むしろ逆で、

  • 医薬品供給を支える責任
  • 地域医療を下支えする実務
  • 日常的な薬学的判断の積み重ね

こうした“薬剤師の本来の専門性”を正面から評価する方向へ、
制度がようやく舵を切ったとも言えます。

薬剤師が専門職として社会から認められ続けるためには、
「何をしているのか」を自ら説明できるだけでなく、
制度上もその価値が可視化されていることが不可欠です。

地域支援・医薬品供給対応体制加算は、
そのための“入口条件”になりつつある。
──今回の改定は、そう受け止めるのが自然でしょう。

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